百三十一話最後の最後で予想外

クイーンスナイプビーとナイトスナイプビー、多数のスナイプビーの魔石と針、そして羽を採り終えたソウスケは蛇腹剣にクイーンスナイプビーやナイトスナイプビーの死体を全て喰わせた。


何度見てグロイ光景だと思いながらも流石に慣れたソウスケは眼を全く逸らさなくなっていた。


「よし、蛇腹剣に死体を喰わせたし目的のハチミツを回収するか・・・・・・その前に器を作っておくか」


アイテムボックスの中から木材を取り出したソウスケは五分程で、数個ほどしっかりとロックが出来る入れ物を作った。


「相変わらず器用ですねソウスケさん。元の世界でも・・・・・・日本にいた時から器用だったんですか?」


「・・・・・・どうだろうな。周りと比べたら器用だったかもしれないけど、別にそこまで頭が抜けていた訳じゃなかったな」


おそらくこの世界に来てからだろうとソウスケは何となくだが確信していた。

ソウスケはこの世界に来てから日本にいた頃より、自分の体を思うように動かす事が出来ている。


「まぁ、それは置いといてメインのハチミツを採取するとしよう」


バカみたいにデカいハチミツを目の前にしてどうやって採取すれば良いのかソウスケは全く分からなかった。


「スナイプビーの巣はかなり固いので、切断してからハチミツを採取するのが基本的ですね」


「そうか・・・・・・ちょっと試してみるか」


かなり固いと聞いたソウスケは自分のパンチでも壊れないのか思い、ハチミツで手がベトベトするのを覚悟で少しだけ力を込めてスナイプビーの巣を殴った。


「・・・・・・マジでか」


響く音がした後、ソウスケが殴った部分は少しだけ凹んでいたが、殆ど無傷と言える状態だった。


「何故かは分かっていないんですけど、蜂系統のモンスターの巣は異様に硬いんです。先程採取の方法が切断と言いましたが、あまり切れ味の良くない剣だと上手く切れず刃こぼれする可能性もあります」


「宿にしているモンスターとは違って巣は頑丈なんだな」


スナイプビーの巣の強度に感嘆しながらもソウスケは飛竜の双剣の刃先から風の魔力を長く薄く延ばし、横からスパッと斬り裂いた。


そして中から出てくるハチミツをせっせと木の容器にハチミツがバラバラに零れない様に、風の魔力を使って一点に集中して零れるようにした。


ミレアナは相変わらずの魔力の無駄使いだなと思いながらも、しっかりと一点に集中して零れているハチミツを見てソウスケの技量の高さが目に見えて分かった。


肝心の魔力の無駄使いをしているソウスケは巣の内部の形・・・・・・構造をじっくりと見ていた。


(・・・・・・正六角形が隙間なく詰められているな。ああいうのなんて言うんだっけ・・・・・・確か、ハニカム構造だったか? あれが硬さの秘密だったとしたら・・・・・・ふふ、また試してみたい事が増えたな)


また実験してみたい事が増えたソウスケは顔に笑みを浮かべながらも、ハチミツを一滴残らず容器に移し終えた。


「よし、ハチミツは全て回収し終えた。時間は・・・・・・まだ昼前だけど今日はもう戻るとするか。ミレアナはどうだ、もう少しモンスターと戦いたいか?」


「いえ、今日は十分に戦えました。残りの時間はソウスケさんに自由に使った方が良いと」


自分は二の次らしい言葉だと思ったソウスケは苦笑いしながら少し考えた末、街に戻る事にした。


それから三日間、二人は街の外に出てモンスターを倒し、宿でフィギュアやエアーホッケー作り繰り返していた。


そして四日後の昼、ソウスケが泊まっている宿に一人に男がやって来た。


「ソウスケさん、起きていますか? お客様が来ていますよ」


「?? 分かりました。直ぐに下に行きます」


誰が自分を訪ねて来たのか全く分からなかったが、ソウスケは一先ず返事をしてフィギュア作りの作業を中断してから下へ向かった。

ミレアナも誰がソウスケを訪ねて来たのか分からなかったが、自分の主を一人にする訳にもいかないのでソウスケに着いて行った。


下へ二人が降りるとそこには正装の妙齢の男性が立っていた。


二人が降りて来たのに気が付いた男性は二人の元へやって来て、二人に自分の目的に人物か尋ねた。


「お二人がソウスケ様とミレアナさまでよろしいでしょうか」


「は、はい。俺がソウスケです」


「私がミレアナです」


ソウスケは自分より圧倒的に年上で正装の男性に緊張したのか、表情が硬くなっていた。

ミレアナは何時もの様にテンパる事無く、訪ねて来た男性に綺麗にお辞儀をした。


「私はマーカス様のご子息、トーラス様の執事でございます。もし、これから予定がございませんでしたらトーラス様の商会へ来ていただいてもよろしいでしょうか」


マーカスという人物名を聞いて、ソウスケはようやく目の前の男性が自分を訪ねて来たのか理由が分かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る