百二十六話共食い?
ミスリルの短剣の刃先から伸ばされた鋭い風の魔力は、完全にナイトスナイプビーの頭部を捉えた。
しかし頭部を捉えたとはいっても、攻撃された範囲がとても短く即死にはならない威力なのでそこから反撃できなくもなかった。
だが動きは確実に止まる。ミレアナはその瞬間に一気に詰め寄りほぼゼロ距離から圧縮した風の魔力を放った。
最後の一撃で殆ど余力が残っていないナイトスナイプビーに、ミレアナのオリジナル技を避ける余裕は無く、頭部は木っ端微塵になった。
そしてミレアナは最後まで油断する事無く、胸部と腹部を短剣で真っ二つに斬り裂いた。
「これで一先ず終わりですね。・・・・・・先に魔石だけでも回収しておきますか」
まだクイーンスナイプビーが出てきていないのを確認したミレアナは、何時モンスターが襲ってきても撃退できるように警戒しながら、ナイトスナイプビーの魔石を回収した。
時は少し遡り、ソウスケが飛竜の双剣から風の刃を放ち、スナイプビーの命を次々に奪っているとスナイプビーの上位種、ナイトスナイプビーがスナイプビー達とは違う行動をしていた。
ソウスケは戦っている最中にスナイプビー達とは全く別の行動をしてるナイトスナイプビーの行動に疑問を持ち、一旦自分を囲っているスナイプビー達の外へ出て全体を見回した。
すると、ナイトスナイプビーがソウスケに殺されたスナイプビーを食べていた。
あまりにも今の状況では考えられない行動にソウスケは戸惑いが隠せなかった。
(・・・・・・いやいやいや、ちょと待てよ。なんでこの状況で共食いをしているんだ!? 普通に頭が可笑しくないか?)
戦いの最中に自分の仲間を食べるという常識外れの行動に全く理解出来なかったが、ナイトスナイプビーが食べている部分に何があるのかソウスケは気が付いた。
(もしかしたら、魔石だけを食べているのか? でも何の為に・・・・・・待てよ、そういう事なのか?)
ソウスケは鑑定を使ってはいないが共食いの様な事をしているナイトスナイプビーが、スナイプビーの上位種だという事は分かっていた。
そして今ナイトスナイプビーの行動でモンスターが上位種になるための要因が一つ仮説が出来た。
(モンスターは他のモンスターや人を倒す事以外に、魔石を食べる事でも強くなる事が出来るって認識で良さそうだな)
ナイトスナイプビーの行動を観察して導き出したソウスケの仮説は正しく、ミレアナが倒したナイトスナイプビーは単純にモンスターや人を倒して上位種に進化したが、現在進行形で共食いをしているナイトスナイプビーは違った。
勿論このナイトスナイプビーも他種族のモンスターや人を倒して強くなってきたが、上位種になったきっかけが魔石を食べた事によるものだったため、その後は倒したモンスターの魔石を意図的に食べたナイトスナイプビーの予想は確信に変わった。
結果、ソウスケと対峙? しているナイトスナイプビーはミレアナに倒されたナイトスナイプビーより数段強くなっていた。
だがそれでもソウスケには勝つ事が出来ないと即座に判断したナイトスナイプビーは、一か八かの大勝負に出た。この戦いの最中で強くなれる事が出来る代わりに、相手に大きな隙を見せる事になってしまう。
しかし自分以外にも数は減ってきているがソウスケに攻撃を仕掛けているスナイプビーはいるため、意を決してナイトスナイプビーは死んだスナイプビーの魔石を食べ始めた。
ナイトスナイプビーの予想とは違い、ソウスケはいくらスナイプビーが襲って来ようと、攻撃を躱してナイトスナイプビーの命を奪う事は容易に出来たが、ナイトスナイプビーが何をしているのか気になったソウスケは攻撃を躱すか流すだけで、ナイトスナイプビーに一切攻撃を加えなかった。
(なるほどな・・・・・・けど、それ以上魔石を食われるとちょっと困るんでな)
ソウスケはナイトスナイプビーとの戦いに邪魔になると判断した残りのスナイプビーを、風の刃を速さを一段階上げて瞬殺した。
「・・・・・・おい、残りはお前だけだ。それなりのもんを見せてくれるんだろうな」
魔石を喰らい、パワーアップを果たしたナイトスナイプビーに対し、ソウスケは腰を落とし脱力した構えを取った。
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