百七話戦うだけでなく
部屋に戻ったソウスケは早速アイテムボックスから木を取り出し作業を始めた。
「・・・・・・ソウスケさんは木工のスキルを持っているんですか?」
「ああ。こういう世界に来て、戦いだけに時間を費やすのは勿体ないだろ。だからこういった趣味として活用できるスキルを神様に貰ったんだよ」
ソウスケは取り出した木を同じ大きさで三十二個に切り分けた。
風の魔力を使いあっという間に木を切り分けたソウスケの技量に、ミレアナは思わず拍手をした。
「相変わらずソウスケさんは凄いですね。数秒でこうも木を均等な大きさに切り分けるにはかなりの技量が必要ですよ。ところでこれからどんな娯楽を作るんですか?」
ソウスケからボードゲームについては何も聞かされていないため、ミレアナは眼を輝かせながらソウスケに尋ねた。
「チェスってボードゲームだ」
風の魔力を器用に使いながらソウスケはミレアナに説明した。
「駒の種類はポーン、ナイト、ルーク、ビショップ、クイーン、キング。兵士、騎士、戦車、僧侶、女王、王とも言うな」
「はぁ~~~~、種類がかなり多いんですね。でも兵士、騎士、僧侶、女王、王の意味は分かりますけど、戦車とはどういう意味ですか」
ミレアナからの質問にソウスケは戦車という言葉をどう答えればいいのか悩んだ。
(漢字で書くと戦車・・・・・・この戦車だと兵器の意味なんだよな。戦車か・・・・・・ファンタジーの職業でいえばなんて例えればいいだろうな)
三秒程考え込み、ソウスケはおそらくこんな感じだろうと曖昧な答えを返した。
「重戦士って感じだ。なんとなくイメージ出来るよな」
「はい。鎧を着こんで攻撃より防御がメインの戦士ですよね」
「まぁ・・・・・・多分そんな感じだ」
大きな斧や戦槌を持った戦士も重戦士なのではとソウスケは思ったが、そこら辺に関しては余り詳しくわないので口を出さなかった。
「そんでマス目が縦八マス、横八マスの計六十四マスあるボードの上で・・・・・・相手のキングの駒かクイーンの駒を取れば勝ちってルールのボードゲームだ」
駒の動きに関しては知っていたが、細かいルールまでは覚えていないので、ソウスケはルール自体は簡単な物にしようと考えた。
「ポーンの数は八体、ナイトにルークとビショップは二体、キングとクイーンは一体。対戦する相手と合わせて計三十六体の駒で勝負するんだよ」
「何というか、これだけたくさんの駒があるとどの駒を動かせばいいか迷いますね」
「確かにそうかもしれないな。自分が一つの駒を動かせば自分はそれ以外の駒を動かせず、相手のターンになる。相手も同様に一つの駒を動かすとそれ以外の駒は動かせなくなる」
実際プレイした事は無いが、オセロよりは視野を広くしてプレイしないとある程度頭が回る相手には直ぐに負けるだろうとソウスケは思った。
(というか、チェスは俺のイメージ的には貴族が酒を飲みながらやっている感じなんだよな。オセロの方がルールが簡単だし、セルガ―さんにはオセロの方を薦めておくか)
そこまで頭を使わなくても楽しめるオセロも今日中に完成させてしまおうと思い、ソウスケの作業スピードがアップした。
ソウスケがミレアナと雑談しながら作業を進める事一時間、ようやくボードが一つと駒が三十六個完成した。
「ふぅーーーー、ようやっと終わったわ。後は明日買う塗料を塗れば終わりだな」
「お疲れ様です。少し休憩したらどうですかソウスケさん」
ミレアナに言われた通り少し休憩しようとソウスケは考えたが、まだ集中力が切れておらず次に作ろうと思っているオセロはチェスと違い、そこまで複雑な形ではないので作業を続行する事にした。
「いや、今良い感じで集中出来ているからこのまま作業を続けるわ」
ソウスケはまた風の魔力を器用に扱い、一つのボードと六十四個に木を切り分けた。一つの大きさはチェスの駒と比べて大きくはないが、数が倍近くありミレアナはどうやって遊ぶのか見当がつかなかった。
「次の娯楽も相手の駒を取るゲームなんですか?」
「いや、次のゲームはオセロって言う間に挟んだメダルをひっくり返すゲームだ。リバーシとも言うんだったかな? とりあえずチェスと比べたらルールは簡単だし、作るのも簡単だ。まぁ、メダルの数が多いけどな」
メダルの多さに愚痴りながらもソウスケは大きさが均一になる様に、丁寧に木を削り始めた。
そんなミレアナから見て正直魔力の無駄使いに思える作業だが、操作はかなりの精密さが必要になり、魔力操作の技術が高いとも言えた。
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