百六話とりあえずゆっくりのんびりと

「それではギルドカードをお返しいたしますね。分かっているとは思いますが、再発行には手数料がかかりますので失くさない様に気を付けてください」


セーレからFランクに更新されたギルドカードを受け取った二人は、セーレに言われた通りに失くさない様直ぐにギルドカードをしまった。


「これでお二人はFランクに成られたわけですが今後の予定、目標などは御座いますか?」


本来であれば冒険者にこういった事をセーレは聞かないが、まだ十五歳という幼さでダンジョンを攻略したソウスケ、そして数が他の種族と比べて圧倒的に少ない代わりに魔法に関しては他の追随を許さないハイ・エルフのミレアナ。

この二人が今後どういった行動をするのか受付嬢として、元冒険者としてセーレはかなり気になっていた。


だが、ソウスケから帰って来た返事はセーレが期待していた物とは違った。


「そうですね・・・・・・今のところ乗り越えておきたい壁というのはありますけど、冒険者のランクを上げたりこの依頼を受けてみたとかは無いですね。それに冒険とは別にやりたい事もあるんで」


ソウスケの答えにセーレは少し残念に思ったが、ソウスケの願いはあまり目立たないという事を思い出し、それなら下手に功績を上げない方が良いのだろうと納得した。


「そうですか。確かにその方がソウスケさんは過ごしやすいかもしれませんね」


「まぁ、そう言う事なんで。それじゃぁ、お疲れ様です」


ソウスケがセーレに頭を下げると、ミレアナもセーレへお疲れ様ですと慌てて頭を下げた。


「はい、お疲れ様です。今日はゆっくり休んでください」


微笑みながら言葉を返すセーレに、自分が言われた訳でも無いのにめったに見れないセーレの笑顔を見て、周囲の冒険者達は癒されていた。


ギルドから出て宿屋に戻った二人は少し時間が過ぎているが、お腹が減って来たため昼食を取っていた。


「セーレさんにはああいう風に言ってましたが、今後の活動はどんな内容なんですか」


野菜と少量の豚の肉が入っているスープを食べながらセーレは気になっていた事をソウスケに尋ねた。

ソウスケの強さと秘密については知る事が出来たが、ソウスケの戦闘以外での技術を知らないミレアナは冒険者ギルドに行かず、どう過ごすのか予想できなかった。


「内容としては物作り・・・・・・というよりは娯楽作りか。ある人に自分の考えを提案したらそういった物を作ってくれって頼まれたからな」


「娯楽・・・・・・ですか?」


ソウスケが以前話してくれた娯楽の話をミレアナは思い出すが、どうやってもソウスケが教えてくれたテレビゲーム等が作れるとは思わなかった。


だが、ソウスケが作ろうと考えている娯楽はそんな機械的な物では無かった。


「ああ、木で作れる簡単な物だ。いや、別にそれを作っていたって訳じゃないからそんな簡単には作れないかもしれないな。まぁ、そこまで材料費が掛からない娯楽だ。木は既に持っているから、後は塗料だけだな」


ミレアナはソウスケがどんな娯楽の道具を作りだすのか思いつかなかったが、とりあえず面白い物なのだろうという結論に至った。


「だから今日はそれを複数個作り続けるってのが予定だけど、どこか行きたい所でもあるか?」


ソウスケはセルガ―に頼まれた商品を商人ギルドに登録してから、商品をセルガ―が経営する娼館へ商品が売り出される前に持って行こうと思ってい。

そちらの方がお得感があると感じたからだ。


(でも・・・・・・最初はあまり使われない気がするな。俺が提案したリフレにくるお客さんは、恋人と一緒にいるような雰囲気を味わいたいから店に来るんだよな。・・・・・・そう考えると別にそんな急いで娯楽の商品を作る必要は無いかもしれないな。まぁ、取りあえず商品は一回セルガ―さんに見せなきゃいけないし、その時に話してみればいいか)


頭の中で作ろうと思った商品をイメージしながら、ソウスケはチラッと横を見てミレアナからの返答を待った。


ソウスケからどこか行きたい所は無いかと聞かれたミレアナは、思いっきり首を横に振りながら答えた。


「だ、だだだ大丈夫です! と、特に行きたい所とか無いですよ。ほ、本当に」


自分は相手が奴隷だからといって、差別はしないとソウスケから言われたミレアナは、確かにその言葉に嘘偽りはないと分かっているが、自分が奴隷という立場なのでどうしても遠慮してしまう癖が抜けていなかった。


そんなミレアナの様子に対してソウスケは伝える事は全て伝えたので、ミレアナに対してそんな態度を取るなとは言わなかった。

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