ヒルクライムについて思うこと
渋山峠ヒルクライムのスタート地点から少しの区間は緩いカーブ、そして比較的緩い勾配だ。『緩い勾配』だと言ってもそれはあくまで『比較的緩い勾配』で、その比較対象はこの先の10%超の勾配だ。普通の感覚だと十分キツい勾配であることは間違い無い。
実際、スタートしてからものの数分で二人の足は急に重くなり始めた。もちろんギアはとっくの昔にインナーローだ。
だがそれは百も承知の上だ。今まで平地を走っていたのが上りに入った事で身体が少しびっくりし、その違いに身体の対応が追いつかないでいるだけだ。もう少し上れば身体が上りの感覚を思い出してくれる。
もちろんだからと言って上るのが楽になるワケでは無い。急に足が重くなったのが少しずつ足が重くなる様になるだけだ。しかもこの先で勾配は更にキツくなるのはわかっている。ココで心が折れてしまえばゲームオーバーだ。
「マサオ~しんどいなぁ~」
トシヤが間延びした声でマサオに声をかけた。折れそうな心をリラックスさせる為の敢えての間延びした喋り方だ。
「ああ、しんどいなぁ」
トシヤに返したマサオの言葉も間延びしたものだった。もっともマサオの場合、トシヤとは違って何も考えていない。ただ、マサオの言葉のリズムとケイデンス、わかりやすく言えば『ペダルを回すスピード』はほぼ一致していた。
身体を動かすにあたって呼吸は非常に重要な役割を担っている。必要な酸素を取り入れ、不必要な二酸化炭素を排出するという呼吸本来の目的はもちろんだが、そのリズムが実に大切だ。
空手という武道がある。その空手には『型』というものがあり、その『型』の三要素として『力の強弱』・『技の緩急』・『呼吸(いき)の調整』という三つのポイントがある。
『力の強弱』は力を入れる所と脱力する所のメリハリ、『技の緩急』は早く動く所とゆっくり動く所とのメリハリ。そして『呼吸の調整』は説明は難しいが、端的に言えば型の中のどの動きで息を吸い、どの動きで息を吐くかだ。この三つがリンクする事によって型のキレが全く違ってくる。
つまり、長い歴史を持つ空手の世界でも重要視される程に呼吸は身体の動きを支配しているという事だ。
話が逸れたのでロードバイクに話を戻そう。ロードバイクのヒルクライム中にペダルを回す時の呼吸はどうすれば効率が良いか……って、そんなの筆者が教えて欲しいです。いやいや、そんな事を言ってると話が進まない。とりあえず一般的に力を入れる時は息を吐くものだから、ペダルを踏み込む時に息を吐くべきではないかと思う。だが、ペダルはクランクに付いていて、一方のペダルが12時の地点、いわゆる上死点にあるともう片方のペダルは6時の地点、いわゆる下死点にある。という事は二つのペダルを上死点から下死点までペダルを踏み続けるとすれば息は吐きっぱなし、吸う暇が無い。となればいつ息を吸うかだ。諸説あるが、下死点までペダルを踏み込むのでは無く12時の位置から踏み始め、3時から4時ぐらいの位置で踏む力を最大にすれば効率が良いらしい。とすると踏むペダルが4時から6時の位置の時に息を吸えば良いのではないか。
だがこれではいくらケイデンスが低くても短く浅い呼吸になってしまう。深い呼吸をする為に左右のペダルを一回ずつ踏む、つまりクランクが一回転する間に長く息を吐き、次に長く息を吸いながら左右のペダルをやはり一回ずつ踏んでクランクを一回転させる。これだとクランクが二回転するのに2秒、ケイデンスにすれば毎秒60回転だ。完成車に多いフロント34T、リア28Tのギア比だと時速は約9キロになる計算だ。このペースで上り続けると渋山峠が4キロとすると27分弱でゴールする事が出来る。
これはあくまで机上の空論でしか無い。実走だと勾配が緩い所では回せるし、勾配がキツい所では回せ無い。要は本人の頑張り次第なのだから。
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