第21話 変わった運命



 瞼を開けて意識を覚醒させる。


 すると、そこは馬車の中だった。


 馬車の外から様々な人の声が聞こえてきた。


「急いで町の者達を避難させるんだ。順番は分かっているな、お年寄りや女性。子供が先だ!」


 窓を覗いてみると、そこはキルトスの町だった。


 しかし、町の人達が多い。

 みな、大きな荷物をもって、どっかへ移動しているところだった。


 そんな中、町の中にいる父のラルトスが声を張り上げて、人々の列をさばいているところだった。


「いったい、なにがおきたんだ?」


 首をかしげていると、聞きなれた声がかかった。


「ラックス様? どうかされましたか」


 その声に、はっとする。

 まさかと思い、声を発した主の方を向くと、そこに彼女がいた。


 シオンが。

 死んだはずの彼女が、心配そうな顔をしてこちらを見ていた。


「しおん?」

「はい、ラックス様のシオンですよ。おかしな夢でもみたんですか」


 安堵の感情が胸の内に吹き上げてくる。


「しおん!」

「きゃっ」


 俺は、思わず彼女に抱き着いてしまった。

 年齢とか、人目……は馬車だからないけど、色々考えるべきだと思ったけど、その時は混乱していたのだ。


「よかった。よかった。生きてた。ほんとに」


 自分でも何言ってんのか分からないまま、あれこれ喋りながらシオンをぎゅうぎゅうに抱きしめて困らせてしまった。


 でも、そんな俺を叱るでもなく優しく抱きしめ返して、なでなでしてくれたシオンもけっこう悪いと思う。


 そんな事されたら泣いてしまうではないか。


「よく分かりませんけど、大丈夫ですよ。私はちゃんと、ここにいますから」


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