第13話 白紙の本と手紙



 シオンは、泣いている。


「っ、どうして。今なのですか……っ」


 悲痛な表情で、何かを嘆いているようだった。


「しおん?」


 俺は何も考えずにその彼女に声をかけてしまった。


「っ!」


 彼女は驚いた表情で、俺を凝視する。


 次の瞬間、彼女は持っていた本を投げつけてきた。


「うわっ」


 とっさによけた俺は、シオンが身をひるがえして、窓を割って外に逃げるのを見た。


「しおん!」


 慌てて窓に近寄る。


 外の暗闇に目を凝らすが、彼女の姿はどこにも見つからなかった。


 すぐに追いかけなければ、と思ったが彼女が見ていたものが気になる。


 本を拾い上げる。

 と、一枚だけページが少し厚いのがあった。


 昼間見た時は気が付かなかったな。


 糊でくっつけられていたのか、二枚のページがくっついていたのだ。それが引きはがされていた。


 初見ではおそらく誰も気が付かないだろうくらいの厚み。

 気が付いたとしても、売り物の本を損傷しようとするやつはいないだろう。


 俺はそのくっついていた二ページに目を通す。


 そこにはシオンに向けて書かれた驚愕のメッセージが書いてあった。


「しおんのやつ。くそっ、はやくおいかけないとっ」


 俺は慌てて、窓の外に飛び出す。


 彼女をこのまま行かせてしまうと、きっともうこの屋敷には戻ってこないからだ。


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