第12話 その日の夜



 その日の夜は、父も母も夜遅くまで起きていた。


 例の魔人の件で、話し合う事がたくさんあったのだろう。


 民達がどうとか、避難がどうとか、深刻な話題は後から後から湧いてくる。

 話のタネが尽きる事を知らなかった。


 俺はそんな二人の邪魔になってはいけないので、そうそうに自分の部屋に引っ込んだ。


 けれどひっかかるのは……。

 忙しい毎日を送っているので、普段は家族で食事をする機会がなかったのに、今日は三人そろっての晩餐だった事。


 両親は俺を不安がらせないように、ありふれた話題しか言わなかったけど、その二人の表情がぎこちなかったのは明白だ。


 たぶん俺が想定している以上にやばいことがおこりつつあるのだ。


 だから二人は、他にやる事たくさんあるはずなのに、家族がいる時間を優先したのだ。


 そのことが、何かとんでもない不吉の前触れのように思えてきて、不安だった。


 どうにも眠れなかった俺は、シオンの部屋を訪ねる事にした。


 夜の屋敷を見回る使用人たちに見つからないように、こそこそ移動すること数十分。


 シオンの部屋の前にたどり着いた。


 普段ならノックをして許可をとってから部屋の中に入るところだけど、数時間前の団欒が俺の脳裏をよぎった。


 俺の不安を誰かに笑い飛ばしてもらいたかったのだろう。


 だから、俺はあえて怒られるような方法で、彼女の部屋に入ったのだ。


 そっと扉を押す。


 カギが閉まっていたら、窓に回ってみようかなと思っていたけど、どうやら不用心な事に開いていたようだ。


 めずらしい。

 生真面目な彼女が部屋の施錠を忘れるなんて。


 俺の部屋にやってきる時も、施錠を忘れたことはなかったのに。


 昼間色々あったから疲れてしまったのだろうか。


 疑問に思いつつ、扉をあけると、そこには昼間見た白紙の本を読むシオンの姿があった。


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