でんせつのまほうしょうじょのでんせつ
竹内緋色
0 伝説のはじまり
幽幻な波が揺らめいていた。
光さす水面の奥に一人の男が存在している。
そこは天も地もなくなった場所。
ただ、深く深く沈んでいくだけだった。
男の名はフランチェン。フランチェン・シグノマイヤー。
彼は記憶を見ていた。それは彼の記憶ではなく、別の何かの記憶であった。
彼の目の前に現れた光。
外なる世界から訪れた悲しき来訪者。
『光は簡単に濁ってしまう』
それ、はフランに言った。
それでも、意味はあるさ。
フランはそれにそう答えていた。
答えはきっとどこかにある――
彼はそれに先を託すことにした。
それが長きにわたる物語の始まりであり、その邂逅は罪深くなどあらず、ただ目を開いていられないほどに無垢な出会いの運命であった。
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