アルビス市民国編25 お昼の巻四
妹さんの状態が安定したので、もう一度周囲に注意を向けると取り囲んでいる複数の気配がどんどん近づいている様です。やはり三種類の集団が同時に動いています。ここは周りに警告を出した方が良いかと思います。
「この周りを誰かが囲んでいますよ」
「さっきミードが言っていた奴隷狩りの連中だろ。最近増えているんだ」
ミードではない男の子の一人が言います。
「奴隷狩りとは奴隷を狩るのでしょうか?ところで、その奴隷はいったい何処にいるのでしょうか?この辺りに首輪を付けた人は居ませんよね」
「違うよ。僕たちを捕まえて、奴隷として他国に売り飛ばすの……一応僕らは市民だからこの国で奴隷するには重刑侵したとか借金を返せなかったとかそういう理由がないと出来ないの」
「……と言うことは、理由も無く市民を連れ去って奴隷として売り飛ばすのでしょうか?」
そういえば、総督が『市民が突然にさらわれて奴隷にとして売られている』とか言っていた気がします。もしかして、その奴隷狩りとやらがこの子達をさらって帝国に奴隷として売りさばいてるのでしょうか?
「そうだよ……こいつの妹も売られかけたんだよ」
ミードを差します。
「奴隷にされかけたと言ってましたね。それは今囲んでいる奴隷狩りの仕業なのでしょうか?」
もしそうであれば懲らしめてあげないと行けません。
「そこまでは分からないよ。その時の一味は捕まったかも知れないし」
「皆さんは隠れなくて良いのでしょうか?」
そういば妹さんも奴隷狩りから隠さないと行けません。今、動かすのは無理なので幻影魔法で隠してしまいましょう。
「それなら大丈夫、奴隷狩りには見つけられない隠れ家がちゃんとあるのさ」
親指を立てながらミードではない男の子の一人が言います。
「でもそろそろ隠れないと不味いだろ」
別の男の子が言います。
「そうだな一斉に散るぞ。妹はお前に任せた」
ミードが腕を上げると周りに居た子ども達が蜘蛛の巣を散らす様に散らばっていきます。私は妹さんの周りを《幻影》で多重に隠蔽を施します。ミードは妹さんを隠れ家に連れて行きたかった様ですが、私が今無理に動かすのは身体に良くないと説得して諦めて貰いました。
「まぁ〔銀髪の魔人〕なら奴隷狩りの十人や二十人ぐらい片手大丈夫だろとはおもうけどさぁ。ここで派手に暴れられるとこまるから大人しくして。ここで大きな事件が起きると俺らの住処なくなるんだよ」
ミードはそう捨て台詞を残すと狭い隘路に潜り込んでいきます。その道は大きな人には通れないぐらいの横幅しか無く普通の人間さんは通れそうに無い感じです。奴隷狩りの人達もここに入り込むのはかなり大変な気がします。
ミードや他の子ども達が居なくなると周りの気配を探ってみました。やはり取り囲む様に迫ってくる集団が二つあるようです。さらにその周りを大きく取り囲むような気配が一集団あります……その中には覚えのある気配も混じっているようです。《完全隠蔽》の幻影魔術でやりすごすことにします。妹さんを寝かせた壊れかけた建物の中から外の様子は見えますし気配を探知すれば何をやっているかも分かります。このまましばらく様子を見ることにしました。
しばらくするとやたらと目立つ茶色の外套に茶色の頭巾を羽織った一団が広場に近づいてきます。数は、10、11……14です。その14人の後ろには別の集団が囲む様に近づいています。その集団は逆に趣味の悪そうな服を着込んでいました。その数は19人です。
茶色の一団の首領と思われる男性が「やつはここに居るんだな?」と言うと一番卑屈そうな男が「間違いないです」と会話している声が聞こえてきました。ここから建物三つ挟んだ通りから小声で話している様です。「じゃあ手はずどおりだ」
その後ろから趣味の悪そうな集団がやってきます。首領と思われるのは見るからに悪そうな顔をした滲んだ顔をした男でその隣にがたいな男が立っています。何故か知りませんが上半身は裸です。ただ剣闘士では無い様で、胸に盾の様な物を付けては居ませんでした。
「おい、奴らはいるか?」滲んだ顔の男がささやくと男の前に小柄な男がそそくさと現れて「親分、気がつかれたようです」と言っているようです。
「急ぐぞ、隠れる前に奴らを捕まえるぞ」
親分と言われた男がそう言うと周りの人達が駆け足でこちらの方に向かってきます。
「何を遣っている早くしろ」と親分が言うと剣闘士紛いの男が言います。
「……むこおに……なにかいるだ……」
訛りが酷くてよく聞き取れませんでした。
「ぬ、先約か?急ぐぞ」
親分はそう言い駆け足でこちらの方に向かってきます。
一方先行している集団の方から次の様な会話が為されているのが聞こえてきました。しかし、あちこちでしゃべっているのを並行で聞き分けるのは結構大変です。
「それで、対策はしてあるのだな?」
「それはもちろん。
「それは闘技場で使う魔法封じの魔導具か?よく貸してくれたな?」
「本家も彼奴を生かしておいたら大損ですから。二つ返事で貸してくれましたよ。これを使用するコストに比べれば損害の方が遙かに大きい。すでに掛け金の損害だけでも万をくだらないと聞いて降ります……」
「それは災難だな。それで、ここで良いのか?」
一行の中のリーダーらしき男が、目と鼻の先の目の前の広場の前に立ち止まって言います。
「確かにこの辺に居るはずです」
「……だが居ないぞ?」
「魔法で潜んでいるのでしょう。魔導具であぶり出しましょう」
その魔導具と言うものを取り出します。どうやら竜をかたどった形をしている指輪の様です。片方の男はそれを指にその指輪をはめるとなにやら不思議な言葉を紡ぎ始めました。
実際には下代魔法において魔素を利用するのは、それが一番楽で効率の良い方法だからであり魔素など存在しなくても利用できる類の代物です。やはり魔法というからに最大最高効率を発揮させなければ意味が無いわけで魔素があれば魔素を利用するのが手っ取り早いと言うだけです。無ければ無いなりにやり方はあります。それも精霊力のない土地で精霊魔法を使うよりよっぽど簡単な方法で可能です。精霊力の土地で精霊魔法を使うのもこれぐらい楽なら間違いなく精霊魔法を使うぐらいには単純なやり方で可能になりますが、精霊はまず体内にゲートを開いて精霊を召喚するなど面倒な手順を踏む必要がありゲートが開きっぱなしの古竜でもない限りはこのような方法は使いたくありません。もっとも森エルフの精霊魔法はこの方法で発動させており、半ば意地で使っている気もしました。そもそも楽する為に魔法を使うわけでわざわざ苦労する必要はあるのでしょうか?目的と手段が逆になってはいけないと思います。
それゆえ私にはこのような魔道具は全く意味がないのですが、妹さんの体内魔素が未だ安定しておらず、どうやら里の外の人は魔素を必要としそうなので、この魔素を枯渇させる魔導具の副作用が心配です。そこで妹さんの周りを蝶の蛹の様なもので来るんでこの魔導具の効果から保護することにしました。見えない蛹の壁の内側では魔導具が効力を発揮できないようにしてあります。その中で妹さんの魔素の吸収と排出が安定するように魔素の循環を微調整しておきます……これでしばらくは良いでしょう。
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