エルフの王国21 ギルドの依頼の巻

 エレシアちゃんに聞いてみることに致しました。

「この星が10個ある依頼を受けたいのですが以下かでしょう」

「フ……フレナ様……なら竜退……治にも行けそうな気が……します……」

 もしかして聞いたのが間違いでしたか。確かに魔法の角笛さえあれば竜どころか魔王でも一撃ですがあれは姉の持ち物です。それでは受付嬢にに聞いて見ることにします。

「受付嬢にお聞きしたいのですが、最初の冒険に適当なモノはありませんでしょうか」

「初心者だと今は依頼が出ておりませんが水路の掃除とかですね。それから猫探しとか薬草摘みとかそう言うのならよく出てきます」

 全部、精霊にやらせればすぐ終わりそうなものばかりですね……。

「もう少し上の依頼はありませんか」

「近くの国までの護衛が多いです。政情が安定している近隣国であれば基本的に安全ですね。ただ基本的には数人でパーティを組んで半月ぐらいかかる依頼が多いです。エルフの王国内は中級者向けの依頼が少ないので基本的には近隣国まで護衛に行きそこで次の仕事を探す事になることが思います。護衛の依頼は臨時パーティで行うことも多いのですが、フレナさんレベルがあればすぐ見つかるとは思いますよ」

 護衛の依頼は、一回の時間がかかるのが難点の様です。それから道に不案内なのが少し不安なのです。少なくとも周辺地図を頭の中にたたき込んでからにして欲しいところです。それから行く街の事前準備が欲しいところです。いきなり人間さんに囲まれたらおそらく興奮のあまり爆発しそうな気がします。

「いえ、もっと上の依頼を探したいのですが……星10の依頼を指さしていいます」

「もしかして荒れ地の大サソリ退治でしょか……あれは熟練が10人以上で達成できるかどうかの依頼なので星10に設定あるのです。それより大サソリは致死性の毒を持っているので、回復役が重要になるのですよ。なので治癒術師ヒーラー……それも防毒魔法が使える位階レベルの人が最低一人はパーティに居ることが最低条件になりますね。最低でもこの条件を満たしてなければその場にお断りしております。第二階梯呪文レベル2から使える毒抜き魔法ディスペル・ポイズンや毒消し薬ぐらいでは恐らく不十分です。魔法をかけるまえに毒が回りきって即死する可能性があるからですが……なので少なくとも第4階梯呪文レベル4以上の毒無効アンチ・ポイズン毒耐性プロテクト・ポイズンあたりの呪文は習得している治癒術師が必須条件です。

「あ……あの……私なら……神聖ホーリー魔法マジック猛毒レジスト抵抗デッドリー・ポイズンが使え……ますけど……」

 先程まで依頼書をじっくり読んでいたエレシアが手を上げて言います。神聖魔法と言うのは、確か信仰心を魔法に変える魔法だと思いましたが……里にはそう言う方がよくは分かりません。恐らく預言の本の中に出てくる奇跡とやらを起こす神官などか使うやつだと思うのですが、これは後でエレシアちゃんに聞いてみることにします。そう言う話は正直早くして欲しかったです。

「あなたは確かエレシアさんでしたか……は冒険者登録をされていないですよね。ここに張られている依頼は全て冒険者に出されている依頼なので基本的には依頼を受けられないですけよ。仮に協力者として参加するとしても職業証明書が恐らく必要になります」

「今……基本的……と言い……ましたよね……。そ……れでは例……外があるのですよね……」

「確かに、依頼者側が別途治癒術師や神官を用意することの条件に対して冒険者ギルドは口を出せませので、依頼者と直接交渉出来ないことはありませんけど、まず依頼者の情報は依頼者が要請しないかぎり、こちからは出すことはありませんから難しいと思いますよ。

「でも……こ……の依頼、北の砦……が依頼主ですよね……」

「しかし、この依頼書に依頼主は書いていないはずですけど……」

 受付嬢が驚いたような顔をします。どうやらエレシアちゃんが確信を付いてきたようです。

「ここ……にフリーニア王女のマークが入って……いるので間違いない……と思います」

「確かに双頭サラマンダーみたいなものが書いてありますけど、これがフリーニア王女の印なのですか……見たことがないので分からないのですけど……」

 受付嬢は手元の依頼書の原本を眺めながら見ながら言います。

 そこに助け船が入ります。実は先程から私達のやりとりを受付嬢の後ろでニヤニヤしながらルエイニアが覗いていたんですよ……もしかしてギルドマスターは姉に近い人種なんでしょうか。

「うん、これは確かにフリーニア王女の印に間違いないね」

「あのギルマス、依頼者の情報は秘密なのではないのですか」

「あ、印に付いて言っただけで、依頼者については何も言ってないよ。だって偽物もかもしれないしそれは証明する必要ないよね」

「それ……なら王女に……許可を貰えば良いの……ですよね」

「規約上そうなりますが、出来るのでしょうか……王女に会うのも難しいと思うのですが」

「それ……で他に10人の……手練れ……が用意できれば……フレナ様だけ……でも依頼は受けられるのですか」

 エレシアちゃんって割と押しが強いですよね。感心して見ております。しかしエレシアちゃんが頑張っている姿もとても可愛いんですよ……。この姿を記録術式で取っておきたい所です……記憶術式一式を母にならっておけば良かったと思います。使う機会が無いとか言って教わらなかったのを悔やみました……。

「仮定ですが依頼主がそれを認めるならば、認めざる終えないです。ただ責任は一切持てませんけど……しかしそれだと出来レースの疑いが出てギルドの評価にはならないです。たまにこういう自作自演の依頼を出して位階を上げようとする不届きものが居るんですよ……」

「それならさ、第三者が付いて行って経過報告すれば大丈夫だよ」

「ギルマス、確かに中立者の証言があれば不正には当たらないと証明出来ますけど、一体あのような場所に誰が行くのです。荒れ地の大サソリの群れに突っ込むとか中堅レベルでも近寄るだけでも危ないぐらいの難易度ですけど」

「ああ、それなら僕か行くから大丈夫。大サソリは一度見てみたかったんだよね」

「それなら大丈夫だと思いますが、もし付いていかれているなら溜まっている仕事を先に片付けておいてくださいね。書類の決算が既に一ヶ月分ぐらい溜まっていると思うのですが……」

「ん−そんなに溜まっていたかな。さっさとやるから大丈夫。それでいつ頃までに終わらせれば行けるのかな」

「たぶ……ん、3日ぐらいあれば……」

「3日かぁ……流石に徹夜しないと無理だなぁ。アハハ」

「アハハじゃないです。どうすれば一ヶ月もどうすれば溜まるんですか」

「決まってるじゃないか、アルエシア。その辺で遊んでいたからだよ」

「全くギルマスは目を離すとすぐこれですか……。それでは今から秘書を呼びますので3日ぐらい特別室で働いてもらいますか?」

「げぇ、それじゃ僕は用事が……」

「駄目です。秘書さんやってしまいなさい」

 そうすると屈強な男達がルエイニアを囲んで引きずっていきます。小さな体躯のルエイニアは宙づりなって連れて行かれます。

「はぁ、これで少しは楽なるでしょうか……。それよりフレナさん、仮にエレシアさんのいった話が事実でも依頼者から新たな依頼書が届かないと斡旋はしまですよ。ギルドの責任として星10の依頼を初心者の冒険者に依頼するわけには行きません」

「エレシアさんそう言う事らしいですが大丈夫なのですか」

「フ……フレナ様が……この程度の依頼では不……足なのを……証明してみせます」

 何かハードルが上げられている気がするのですが気のせいでしょうか。

 それよりエレシアは神聖魔法が使えるわけでそれについて聞いてみたいとおもいます。

「エレシアちゃん、先程、神聖魔法が使えると言っていましたがそれは事実なのでしょうか」

「は……はい、神聖……魔法がつかえりゅのでしゅ」

 最後の方が聞き取れませんでしたがどうやら使えると言っているようです。

 それからどのぐらいの魔法使えるかも聞いておきましょう。

「それでどの程度の魔法が使えるのですか」

広域エリア防御結界プロテクション軍団祝福レギオン・ブレス重傷回復キュア・フェイタルぐらい……までは使……えます……階梯呪文レベルで言うと第五……相当にな……ります」

 今から戦争でもやりそうな感じの名前の魔法名が並んでいます。

「神聖魔法には魔法の教本みたいなのはあるのですか」

「そ……それは……神殿で……教わる……もので……本に書いてあること……ではありません」

 神聖魔法の本も一度読んでみたかったのですが口頭で教えているみたいなのでどうやら難しそうです。それから神殿と言うことは神聖魔法使いのギルドがある教会ではないようです。

「神殿はどこにあるのでしょう」

「王宮……地区の方に……」

 神殿が王宮地区にあると言うことは一般人は入れないのでしょうか。その辺りも聞いてみることにします。まとめてみると王宮地区にあるのは〔赤き勇者〕を祭った神殿であり神を祭った教会ではないらしいです。しかしながら〔赤き勇者〕は森の守り手なので信仰の主体は森になるようです。神聖魔法は、信仰の主体により使用できる魔法にばらつきがあるらしく〔赤き勇者〕の神殿の信仰魔法は森に関する魔法が多く使えるそうです。そうするとエレシアちゃんは巫女になるのではないでしょうか。確か神に使える女性を巫女と言ったと思います。

「と言うことはエレシアさんは巫女さんなのですね」

「い……いえ……違います……」

「神殿に仕える女性の事を巫女さんと言うのではないのでしょうか」

「巫女は……神に仕え……るお方ですが……いつも神殿の奥深くにいます……実はみた……ことはありません……。エレシアは巫女ではな……神祇官ポンティフィクスに過ぎません……」

 どうやらエレシアは巫女さんではなかったようです。巫女さんは神殿のお籠もりして出てこないようです。どうやら神様みたいなものです。

 次は本格的な作戦会議と行きます。依頼をもぎ取るための段取りを決めていきます。

 エレシアの言うには、北の砦にフレナ様が大サソリ退治向かう事を告げ、そのために十人の騎士を付けて欲しいことを手紙にしたためて送ればいいと言う話です。「そんな簡単な手段で上手くいくのですか」と聞いたところ私の話は北の砦にも既に伝わっているのではないかと言う話です。その話を聞いていればフリーニア様の正確から言って恐らく乗ってくるだろうと言うことです。しかし噂が流れるのが早いすぎる気がします。それから「フリーニア様は武を司るお方なので恐らく本人も来るのではないかとの事」遠回しに戦闘狂バトル・マニアと言っている気もします。

 早速、手紙をしたためさせて使者を送ります。手紙の内容や手配はエレシアの家の執事に任せるそうです。その方が説得力があると言う話です。恐らくあの脳筋騎士みたいに徹夜で走れば翌日には手紙は届くでしょう……。砦と都の間には早馬網があり、三エルフ里ごとに馬を乗り継いでいくらしくそれだと徹夜で走る必要も無いらしいです。

 使者が戻ってくるまでは暇なので、図書館通いを続けます。

 今度は天敵の酒について調べてみましたのですが……お酢は酒から作られるのですか。蜜柑の親戚に甘味が全くない種類があり、それの果実を搾って取った果汁の事ではないのでしょうか。里では、これを酢橘すたちばなと呼んでます。草の味付けや脂っこさを抑えるのに良く使っていました。しかし似たような物がどうやらお酒からも酢が出来るようです。しかし酢を作るまでには何ヶ月もかかる様です。それなら酢橘で十分な気がしますが、そういえば酢橘をこの辺では見かけません。どうやら外世界のお酢は酢橘汁の代替品として使われている様です。

 酒を即座に酢に分解してしまえば良い気がします。これでどうやらお酒を飲まずに済みます。しかし酢でもコップ一杯ともなると飲のは流石にキツいので更なる中和法を探さなければならないようです。

 酒を水に変える方法を試行錯誤を繰り返している内に3日経ってしまいました。今は実験する場所がありませんので図書館で本を読みながら想像していただけで、もう少し時間があれば良いアイデアが浮かびそうなところですが、エレシアちゃんが北の砦に送った使者が戻って来ましたと言う報告があったので、冒険者ギルドに顔を出さないとなりません。


 エレシアちゃんを連れて冒険者ギルドに顔を出すと★10の依頼の上に新しい依頼が張られていました。


 《荒れ地の大サソリの群れ退治》

 条件:魔法か剣が使えること想定位階10以上(暫定化)

 場所:北の荒れ野(案内人がつきます)

 人員:1から2名

 時期:できる限り速やかに北の砦まで来れること

 備考:残りの人員と回復役はこちらで持つ。

 報酬:金貨10枚

 難易度:★★★★★ ★★★★★


 依頼は完結に書かれております。

「これなら条件満たしていますね」満を持して受付嬢に依頼を持っていきます。ところでこの回復役とはエレシアちゃんの事でしょうか。回復役の部分を指さしながらエレシアちゃんの方を見ると頷いていたので、エレシアちゃんのことの様です。

 依頼書を受付に持っていくと受付嬢が言います。

「この依頼、いくらなんでも出来過ぎていませんか……フレナさんを指名している気もします。元々この依頼は、難易度の割に報酬が安すぎるのですよね……なので受ける人が居なかったのです。かなりの危険を冒して金貨10枚ぐらいで動く冒険者はほとんどいないと思います」

 安すぎると言われてもそもそも金貨10枚がどれほどのものか分かりません。今は職業証明書が欲しいだけですし、それよりライバルがいないのは僥倖です。さっそく依頼を受けてしまいましょう。

「おお、フレナ。来たね……さっそく行こうか」

「ギルドマスターさん、ヨレヨレじゃ無いですか」

「まぁ三日も徹夜したからねぇ、アハハ、でも大丈夫。あ、でも準備に時間がかかるかぁ。それじゃあ先に行って待っていようかな」

 ルエイニアはそう言うとギルドの入口から出てきました。

 しばらくすると階段を降りてくるひげ面の男が現れてキョロキョロしています。

「どうしたのですか……」

「いや、ギルマス……ギルドマスターがいなくなりまして……」

「ルエイニアさんなら、先程北の砦に向かうとか言って出かけましたよ」

「また逃げられた……」

 男ががっくりうなだれています。

「まぁ、気を取り直してください」

「やりかけの仕事を尻拭いする身もなってください……これはアルエシアちゃんに慰めて貰うしか無いな」

 男は「ママ」と叫びながら受付嬢に向かっていきます。手前ではたき倒されています。

「ギルドマスターをちゃんと見張っていないからですよ。今からだともう追いつけませんよね。ギルド内でも一番足が早いですし、マスターが不在の時の代理が副マスターの職務ですよね」

 男は受付嬢に正座させられて延々と説教されています。しかし、なぜか嬉しそうな顔をしています。何やら見てはいけないものを見たような気がします。

「エレシアちゃんは見てはいけません。早々に手続きを済ませて出発しましょう。受付嬢さん早く手続きしてください」

 受付嬢は髭男への説教に夢中でしたが、私がじっと見ているとやっと気がついた様で依頼の手続きを始めます。

「それではこれを持って北の砦で見せてください」と蝋で封のされた手紙を渡されます。

「渡す前に中を見たら駄目ですよ。依頼は向こうになりますので」

 受付嬢がにっこり笑いながら言います。

 それでは北の砦に向かいましょう。

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