第1章 エルフの王国編
エルフの王国1 森エルフの王国
次の朝。開口一番母に向かって言いました。
「それでは旅に行ってまいります」
「夕飯までには帰って来るのですよ」
日帰り旅行ではないのですが……なんですかこの親は……。
「ええ、何年後の夕食か分かりませんけどそれまでには帰ってきます」
「じゃあ、お土産よろしくね」
姉です。姉が顔だしてきましたよ。普段はまだ寝てる時間じゃないですか……それにしても相変わらずノリが軽いですねこの姉は……。
「ところでその姿のままででかけるの……受ける……」
姉のツッコミが入ります。そういえば着替えていませんでした。寝間着のままで出かけるところでした。うっかりです。
髪を丹念に束ねていきます。ポニーテールの方がよさそうです。なのでポニーテールにします。髪をバッサリ切っても良いのですが髪を伸ばすのも大変です。そういえば石鹸とか櫛とかいりますよね。これらも忘れてはいけません。お風呂道具一式と髪の手入れ道具は絶対に持っていかないと行けません。
寝間着を脱いで緑の
ついでにお部屋も片付けておきませんと。いつ帰ってこられるか分かりませんし。なので精霊さんに定期的に掃除をやらせることにします。いっそのこと父の部屋のように封印してしまっても良いのでしょうけど……。流石に腐海になるのは勘弁です。
こういうことをしているとあっと言うまに時間が過ぎてしまいますね。それではホントに行ってきます。
現在、書くことが特にありません。ただいま里の道を歩いているだけです……。毎日見ている代わり映えのない風景が続きます。遠目になにか物珍しそうに見られている気がしますけどここで気にしたら負けですよね。なので気にしないことにいたしますします。所詮、普段通っている道です。森への入口まではあっさりつきました。
問題はここからです。里は幾重にも結界や罠が張ってあり侵入者を阻んでいるわけです……それでこの里は何千年も平和だった訳です。里から外に出るには森に張り巡らされた結界に触れない様に森を通過する必要がありました。結界の避け方は秘密なので詳細は書けない訳ですが……。里から外に出入りする為の正規のルートもあるのですけど、そのルートを利用するには里長《さとおさ》の許可が居るんですよ……。許可自体は簡単におりるのですが里長としゃべると面倒なので里の外に出る人——例えば父とか——は、みんなこの方法で外に出るらしいです。里長に話しかけると一か月ぐらい茶飲み話に付き合わされるのです。四六時中寝る間も惜しんで一ヶ月も茶飲み話と言う拷問は流石に勘弁願いたいので……裏道使って行くことにしました。
ここではダッシュ……ここではジャンプ……隙間を縫うように森の中を進んでいきます……油断すると罠に引っかかるので慎重かつ大胆に移動する必要があります。
途中で触手の罠にかかったとか洒落では済まされまん……。罠感知と回避は基本能力ですしその辺の大したことない罠に引っかかるなど姉にバカにさられること必至なのでこちらも必死です。
罠を避ける度に緊張がドンドン増してきます……。そろそろお手洗いに行きたいぐらいところです。ここは一番の我慢どころです。
森の中には精霊が沢山飛び交っている様ですが……いちいち気にしてられませんね。しかし、この辺りに新しい足跡が結構ありますね。実はこっそり里から出ているヤツ、父以外にも結構いるんじゃないでしょうか……。そいつらを捕まえて話を聞いておけば良かったかも知れません……これは最大の失策でした。ですが失敗は取り返せば良いのです。
数時間ぐらい歩いたところで、どうやら最後の結界にたどりついたようです。
『ここから先、ハイ・エルフの里の関係者以外入るべからず。入ろうとすると酷い目に合うぞ。』
そんな文面が複数の文字で、でっかく書いてある場違いな門があるのです。一体誰が作ったんでしょうかコレ……。
さてここはどうやって抜けるんでしたか……なんか思い出せないんです……なので、ここで一度、食事休憩を取ることにいたします。
その辺の草を食べても良いのですが……今日はお弁当を持ってきました。当然、明日の分はありません。今晩の分もありません。非常食は最後の手段なので……今も内に木の実と草とか集めておかないとだめでしょうか……。
そうえいば一つ思い出した事があります。森から外にでると精霊が少なくなるので思うように使えなくなるとか……と父が昔言っていた気がします。精霊が少ないところで無理に精霊を呼び出すとその土地から精霊が奪われていきます。精霊は時間と共に回復するのですが完全に奪われてしまうと回復するのは困難になります。そのため精霊が少ないところで精霊を酷使してはいけないのです……。
こちらには剣と弓矢がありますし。いざとなったらその辺の獣を魔法で倒せば食事は手に入ります……。この辺に獣の気配は見当たりませんが……
食事を食べながら耳をピクピク動かしてみます。聞き耳を建てて周囲の音や気配を調べていきます……周囲に危険なモノは無さそうです。後は最後の結界を抜けるだけです。ここは里と外の境界でありここから外の世界に出るわけで。なんかワクワクしてきます。語彙もどんどん乏しく無っていききます……。なんか表現が雑になってきた気がします。このまま行くと最後は『尊い』で文種が全部埋まりそうな気がします——そういえば『尊い』は最近里で流行りだしたる表現でほんの少し前までは『いとおかし』と言ってたんですよね。
まだ里から出ておりません。ここで語彙を失っては話が進みません。そこで少し頭を使って考えてみます。そういえば抜け方思い出しました。
ここは、堂々と真ん中を通れば良かったんです。ここに仕掛けられているのは下手な小細工すると逆に引っかかると言う罠です。実は、この門ハイ・エルフ以外は通れない様に作ってあるらしいのです。ハイ・エルフ以外を通したいときは……それは長が知ってるかも知れませんけど……。その方法は、聞いた事ありません。そもそもこの門までたどり着けないと思います。
それでは里に向かって一礼をして森を去ることにします。
……と言ってもまだ森の中なんですよね。しかし精霊があまり見当たりません。あとなんだか薄暗い気もします。門をくぐった途端に急に獣の匂いがしてきました……。もしかすると、すぐにでも夕飯にあり付けるかも知れません。少し期待することにいたします。
現在、里から西に向かっている訳です。実はなんとなく方角が分かっております。それだけではなく里からの距離も漠然と分かります。ハイ・エルフのこの能力は空が無かった時代の名残らしいとどこかで聞いた覚えがあります。空がないと言うことは太陽も月も星も存在しないってことですでしょうが……かつてはそういう時代があったらしいのです……全く想像出来ませんが……。
ひたすら西に向かってどんどん歩いて行きます。他の言語で表現する場合、歩くと言うより跳ぶと言う方が適切なのでは無いかと思います。ウサギが駆け抜けていく感じでひたすら歩いて行きます。
……この森ずいぶん大きいです。先程から同じところを何度も歩いている気がするのです……しかし感覚的には全く迷っておらず……里からの距離は確実に開いているはずです。それでも途中で心配になってきたので木に登ると太陽の向きを確認してみます。どうやら方向は間違っていなかったようです。ついでに遠くの方まで見渡していきます。見渡す限り森が続いていますが、西のハズレの方に草原らしきものがある気もします……目の錯覚でしょうか。
そういえば、こういう時に便利な道具に地図とか言うものがあるのですが……それがあれば便利ですよね……里の中にも地図は探せばあるとはあると思いますが恐らく地図を探して遭難とか洒落にならないことになりかねません……。
しばらく進むと日が暮れてきたので夕飯の仕度をする事にします。その辺の木の実をかき集めて、水は水精で……いいえ周囲に精霊があまり居ないようなので精霊を使うのは辞めておくことにします。
そこで聞き耳を建てると水の流れる音が聞こえてきたのでそこから水を汲んでくることにします。
すぐ近くに小川があったのでそこで水は調達できました。ついでに魚も捕りたかったのですが釣り道具は持ってきません。釣り道具を一から作ってる時間は今はありませんので諦めることにいたします。旅に出るときには釣り道具も持ちあるいた方が良いかも知れません。
次に火をおこす事にします。枯れ葉や小枝を集めて来てこれに火を付けて、鍋を煮る訳です。本来、火精にやらせるべきでしょうが今回は火打ち石とか言うモノを使って火を付けてみたいと思います。
……つかない……どうやってもつきせん。
仕方ないので火打ち石で火を付けるのは諦めて今回は魔法で火をおこすことにします。今は精霊を使いたくないので火精ではなく変わりに火球ではなく着火の魔法を使ってみることにいたします。魔法は精霊より微調整が難しいので調節が面倒なので普段はあまり使わないのです。火精さんなら火加減まで見てくれますが、着火の魔法は火を付けるだけでその後の火加減は自分でみないといけないですよね……。
「着火」
パチパチと火が燃えだしたのを確認し小枝を少しずつ加えていきます。すると水を入れた鍋が徐々に温度を上げていきます。そこに集めてきた木の実や草、茸、根菜などを放り込んで煮ていきます。ぐつぐつしだしたら火を弱めて最後に塩で味付けを整えます。この塩は、里の塩倉庫に山積みになっている塩を少し拝借してきましたが、そういえばこの塩は誰がどこから倉庫に運んできたのでしょう。
良い匂いが森の中に広がっていきます……もうしばらくしたら食べても大丈夫です。
「それでは、いただきます」
お碗に注いで鍋を食べます。
……なんかイけます。なんか一周回った感じで、アリって感じがします。
そんな訳でアッという間に鍋の中身を食べ尽くしてしまいました。
このまま寝てしまいましょうか……ここでは天幕を張らないと行けませんね。
「
天幕がバサッと広がります。少し大きかったででしょうか……天幕の端が少しちょっと木に引っかかってますが、布地が破けてないみたいですし大丈夫みgたいです。
今夜は天幕の中で寝ることにします。あと灯りが必要になるでしょうか……夜目が利くので特に要らないですけど。
天幕の中にはベッドはないのですよね……。武器庫の中にあった
それでも、お風呂だけには入りたいのです……今日のところは小川の水浴びで我慢することにします。
翌日の朝。木枯れ日が差して来てからのんびり目を空けました。
「天幕、仕舞え」
それでは荷物を片付けます。それより朝ご飯……夕飯の残りはありませんね。仕方ないので近くに果樹があるのでその果実をむしって朝食代わりに食べることにします。
ムシャムシャ……。
それでは「今日も行って参ります」と言うことで、そのまま西の方向に進んでいきます。
森の景色をいちいち書いても面白くないのでこのあたりは省略しておきます。
それよりお風呂には入りたいところです。森の中の湯泉とかイキじゃないですか……旅の本の中に湯泉っていうものが出てきたのですがそれは極楽に行った気分になるらしいです。そこに一度入ってみたいのですが……この森にそんなものは無さそうです。
そんな感じで二日ばかり一直線に西に飛んでいきました……。里の距離を感知すると順調に進んでいるのが確認出来ます。
その辺りからまた森の雰囲気がが変わってきました。なんかどんどん緑が濃くなって、薄暗くなって行きます。漆黒の森とも申しましょうか。ほとんど木枯れ日がなくなってきました。気温も段々下がっていき肌寒さを感じます。
薄暗くても夜目が利くので問題無いは特にありません。
……しかし、先程から複数の視線を感じます……どうやら、なにか囲まれているようです。
少し聞き耳を立ててみることをします。耳をピクピク動かして周囲の音を注意深く確認してみます。やはり、なんか物音がします……しかも弓を構えているようです……私、いきなりピンチの様です。
さてこういうときはどう対応したら良いでしょうか……。弓には弓で相対したら良いのでしょうか……しかし、こっちから喧嘩ふっかけるのは愚策ですよね……。話しが通じるのであればそれで済めばいいのです。それでは一度穏便に話しかけてみましょう。
四ー五人ぐらいが周りを警戒しているのが感じ取れます……。向こうも警戒してならが近づいているようです。私を取り囲んでいる包囲網が徐々に小さくなってきています。最悪、魔法で一発森ごと焼き払えば大丈夫です。
「&☆♯△◎……」
耳が横に飛び出た連中が私の取り囲んでおり。その中の金髪男が一人出てきて何か話しかけてきました。
「はい、なんでございましょうか?」
「△☆♯△&◎……」
どうも話が通じてません。たぶん言葉が違うのだと思います。そこで頭を廻らせて発音が一致しそうな言語を検索していきます……。他の言語は文字はわかるのですが発音までは少し分からないのですが……なんとなく似たような言語をみつけたのでそれを使って試しに話してみることにします。
「☆☆●?」
「♯♯◎■◇……」
どうやらなんとなく話は通じたようです——会話を違う文字で書くと意味が分からないのでここからは翻訳しておきます。
「お前は一体誰なのだ。誰の許可を得てここにいる。そもそも、なぜこのような場所に入り混んでいるのだ?」
「……私は、西の里から来たエルフですが……」
「なに西だと……ここから西には森しかないであろう。そこに里などある訳がない。口から出任せを言うな」
「ここから西に三日ぐらい行ったところにハイ・エルフの里があるのです。そこから来たのですけど……」
「三日だと……伝説の上位種の里までは少なくとも十日はかかるはかかると聞いているぞ。口から出任せは辞めて大人しく投降そろ」
嘘はついてないのですが……もしかして一日に歩ける距離が違うのでしょうか?それではここは相手に乗っかってみることに致します。
「恐らく十日ぐらいの場所だと思います」
「それで、そのような場所から何の用事だ……さては盗掘者の類だな。投降して大人しく付いてこい」
何か、勘違いされてませんか……。
「いえいえ、私はハイ・エルフですけど」
「いいからついてこい」
見るからにひ弱わそうなので簡単に片付けられそうなのですが人は見た目で判断してはいけませんね、それから宣誓で「どんな生き物も軽んじてはダメよ。敬意を持って接しなさい」と言ってしまいましたので、後で敬意を持って経緯の説明をすることにいたします。
その間、連中を観察していきます。男性が2人に女性が2人ですか。髪の色はイロイロあるようです。正確な色は薄暗いので流石によく分からないのですが。緑の
四人組に半日ぐらい連行されたあげく鳥籠の中に入れられました。しかし、鳥籠なので合っても周りがよく見えます。小屋でしたら見えませんでした……。
ここは森の中に作られた大きな里みたいな感じです。この言語では村と言うのでしょうか……遠目で村の端々まで見て回ります。結構人多いきがします。里といえば精々二百人ぐらいです。ここには少なくとも千人は居そうな気がします。とても大きい村な気がしますです。千人も居れば村とい言うより街と言うのでしょうか……
それより食事はないのですか……。
お風呂も欲しいところです……。
武器も背嚢も持って行かれたので手元には何も無いのです。いざとなったら精霊を呼びます。森の中より若干は精霊さんが居る様なので多少使っても大丈夫ですよね。
観察が終わると暇なのでそのまま呆けていると向こうから人が近づいてくる気配にがつきました。
どうやらドレスを着た少女と女騎士の様です。少女の背丈は少し小さめで
「た、大変すみません。今からここから出すように手配いたします。今回は大変申し訳ないことをしました。でも彼等は知らなかったので許してあげてください。こんなところにハ上級種の大賢者様がこのようなところに来られるとは思いも至りませんでした。恐らく彼等も思わなかったと思います」
お姫様がたたみかける様に言ってきます。
そもそもと言うのは大賢者と言うのは一体何を差しているのでしょうか……。呆然としていると少女から謝罪の言葉が雨あられの様に飛んできます。もしかしてこのお姫様は話聞かない系の娘ですか……姉みたいな。いや姉が二人以上いたらこまります。あまりに長いので途中から聞き流していましたが、ようやく長い説教が終わってお姫様が一歩下がります。
「どうぞこちらへ」と女騎士が手を差し伸べて言います。そうですねここは流れに乗っかりましょう。
「それとこれはお返しします」
持ち去れた剣と弓と背嚢ですね。
「それでは少しお時間いただけますか?」
剣と弓を受け取ると確認しながら身につけなおし、背嚢の中身を確認していくことにします。背嚢を開けた気配は感じとれませんでした。
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