孤高の奇人とフラ・デ・シング

小河

プロローグ

小さい頃から「特別になりたい」と願っていた。

科学では説明できない不思議な物事を操り、手の平から謎の光線を発射し、何をせずとも人の心を読める力を持つ。

そんな現実的には不可能な特別に強く憧れた。誰だって人生のどこかで思うはずだ。日曜の朝に必ず現れるヒーローに。魔法や神秘的な力を借りて戦う少女達に。


自分もなって世界を救いたい。特別になりたいと。俺も例外ではない。


しかし年を重ねるにつれて、それが絶対に叶わない夢だということに気づいた。

実際は気づかないふりをしていたものの、さすがに小学校の頃にはねばるのを諦めて

興味のないTV番組やサッカーなどに無理矢理目を向けていた。けれど「特別」への想いは変わることはなかった。それは誰かの何か、また他の人とは違う何かになどと漠然としたものになってしまった。そして俺は願うばかりで何一つ努力をしていない。


与えられたものをそつなくこなし、自分でもできそうなものに片っ端から首を突っ込んでは、飽きたらすぐに次に乗り換えていた。

今思えば甘えた生き方だし、特別になりたいと言っている割には随分と能天気に毎日を過ごしていたものだ。



あの日俺に咲いた赤い花、それが全てのはじまり。そこから俺の長い旅路が広がっていた。

人と違うとは、孤独の海に静かに溺れていく感覚のようで、

扱いきれない大きな力は、自分の体の中央で得体の知れないものに侵食され奪われていくよう。

こんなことになるなら、なりたくなかった。願わなければよかった。

と何度も考え、もがきあらがっていた。


その度にあいつらが俺の手をとり、肩を叩き、背中を押してくれた。


これは俺があいつらに出会い、俺のなりたかった特別とは何かを探しにいく話。

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