ゲームの世界に閉じ込められた!?でも、帰りたいとは思いません!!

辺銀 歩々

第1章 決意、そして旅立ち

第XX話 とある冒険者の結末

降り注ぐ雨の中、ぬかるんだこの大地に膝をつけて、紛い物の天を仰ぐ。


冷たい雨は顔の上を這うように流れ、この雨に乗って俺から溢れる紛い物の血がどくどくと流れ落ちる。


そんな血は雨と共に土へと染み込み、果てはこの紛い物の大地へと混ざるのだろうか。


そうなれば息絶える俺の体はこの紛い物の大地と同化するのだろうか。


だが、今となってはそんなことなどどうでもいい。


雨で濡れ、血で汚れた俺の体は、しかし不思議と不快ではない。


本物の世界では味わえなかったこの気持ち、一体これは何というのだろうか。


今まで本物の世界で抱えてきた俺の中のごちゃごちゃとしたものが偽りの雨と共に体から洗い流され、溢れ落ちる。


すると次第に頭の中の霞がかった思考は晴れ渡り、体はすっと軽くなる。


あぁ紛い物の雨よ、あぁ紛い物の天よ。


紛い物の世界で死ぬ俺は、一体どこに向かうというのか。


ただ願わくは、元の世界には帰りたくない。


“本物”という名の“嘘”しかない元の世界には俺は帰りたくない。

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