ようこそ! ベジアイランドへ〜まめの王子【ピスオ】と楽しい野菜たち。

アーリーレッド

第1話 まめの王子さま

このお話は、あとちょっぴりで終わってしまう冬のお話。

 雪がチラチラとふっています。20cmほど積もっている雪けしき。

 一面、真っ白な畑の中に枝豆の形をしたおしろがありました。

 まめの王子様の【ピスオ】は足をジタバタさせながら考えごとをしていました。


「どうして冬さんはぼくのたんじょうびが来ると、自分のふるさとに帰ってしまうんだまめか?」


 ピスオのたんじょうびは2月3日。【春のおとずれ】なのです。


「ぼくは冬さんといっぱいいっぱい遊びたいまめ」


 冬のときに雪の結晶さんとおともだちになったピスオは冬さんが帰ってしまうりゆうを聞こうと外に出ようとしましたが、あまりの寒さに外に出ることをやめてしまいました。


 そうすると、【コンコン】とドアをノックする音が聞こえます。


「だれまめか?」

「雪の結晶よ」


 ピスオがドアを開けると結晶さんがニコニコして来てくれました。


「実は会いたいと思っていたんだまめ」


 とピスオが答えると、ニコニコしながら


「知っている。ずっと見てたから」


 と言われたピスオはちょっとだけ恥ずかしくなりました。


「それより聞きたいこと、あるんでしょ?」


 ピスオは思い出したかのように結晶さんに聞いてみるのです。


「僕の誕生日は2月3日。まめのひまめよ。でも、冬さんは僕の誕生日をいわってくれる前にいつも帰っちゃうのはなんでまめか?」


 フフフと結晶さんは笑いました。


「それはね、春さんがこんにちはするからよ」

「春さんがこんにちはまめか?」

「ピスオは春さんとは仲良し?」

「仲良しまめよ」

「春さんと冬さんは仲良しだけど、一緒に入れないの。じゅんばんこで、きせつをみんなに教えているのよ」

「じゅんばんこ? どうしてじゅんばんこするまめか?」

「桜さんが花を咲かせるためよ」


 ピスオはうれしそうに笑った。


「桜さんのおはようは春さんのおかげまめか!」

「そうよ。だから冬さんがずっといちゃうと、桜さんがおはようできなくなっちゃうの」

「それはいやまめだけど、冬さんとまたおわかれもイヤまめよ」

「ピスオはぜいたくなのね」

「だいじなものはぜんぶ、そばにいてほしいまめ。ちょっとお話をしてくる」


 と言うと、ピスオは緑のマフラーをして、外に出てさけびました。


「冬さーん。おはなしするまめ!」


 するとどうでしょう。 白いはおりを着た、冬の女王さまが空からおりてきました。



「どうしたのですか? まめの王子」

「お願いがあるまめ」

「お願いですか?」

「2月3日のピスオの誕生日におめでとうしてほしいまめ」


 冬の女王さまはこまった顔をしてしまいました。


「2月3日は春さんに季節をお渡ししなければいけないのです」

「わかっているまめ。でも、おめでとうしてほしいまめ」


 冬の女王さまは何かいいほうほうがないのか考えました。


「これはどうでしょう? 私の代わりに雪の結晶がおめでとうをする」

「ダメまめ。冬の女王さまにおめでとうしてほしいまめ」

「こまったわね。春さんとのやくそくがあるから」


 ピスオはヒラメいた顔をして冬の女王さまをみます。


「なら春さんにおねがいすればいいまめね! そうしたらおめでとうしてくれるまめね!」

「.....春さんがいいと言ってくれるのであれば......」


 ピスオは冬さんの言葉を最後まで聞かずに歩き出しました。


 春さんはみなみの方からいつもやってきます。

 なのでピスオはみなみに向かうことにしました。

 雪の結晶さんに乗り、海に着いたピスオは大きな声でクジラさんを呼びます。


「クジラさん、いるまめか?」


 少したつとクジラさんが顔を出しました。


「な〜んだ〜い?」

「春さんとおはなしがしたいまめ。みなみにつれていってほしいまめ」


 クジラさんは塩を吹き。まぶたをパチンとします。


「もちろんさ。僕の背中に乗るかい? それとも僕のお口の中のおうちで休むかい?」


 クジラさんが大きな口を開けると赤いいえがありました。


「寒いからいえの中であったまるまめ」


 と、ピスオはクジラさんのお口の中にあるいえで春さんのいるみなみ

 につくまであったかくすることにしました。


 しばらく、すいすい、すいすいとクジラさんが泳いでいると、ポカポカしてきてピスオは目をさまし、外に出ると春さんが空の上をあるいていました。

 ピスオはクジラさんの背中に乗り、春さんに両手をふりました。


「春さん、おひさしぶりまめ!」


 春さんはピスオを見つけ、にっこり笑います。


「やあピスオくん。こんなところまでどうしたんだい?」

「おねがいがあるまめ」

「おねがい?」

「2月3日のピスオのおたんじょうびに冬さんにおめでとうしてほしいまめ。だから、いっしょにいていいまめか?」


 春さんは少しこまった顔をしましたが、えがおでうなずきます。


「いいよ。季節さんだって、1日くらいゆるしてくれると思うから」


「やったまめ!」


 大喜びするピスオ。くじらさんも塩を吹きうれしそうです。


「でもないしょのないしょだからね」

「うん。ないしょにするまめ」

「それじゃあ、もうちょっと待ってて。僕はゆっくりピスオくんのおうちに行くから」

「わかったまめ。くじらさん、このままみなみに向かってほしいまめ」

「どうしてだい?」

「あと、夏さんと秋さんも呼んでみんなにおめでとうしてもらうまめ」


 春さんはおどろきました。冬と春の間はまだわかるけど、夏と秋を呼んでしまったら、季節さんがなんというかわからないからです。


「ピスオくん、それは......」

「しゅっぱつまめ!」


 ピスオを乗せたくじらさんはみなみへみなみへと向かうのでした。


 次にピスオが会えたのは夏さんです。

 夏さんはきんにくがむきむきの男の子です。


「夏さん、こんにちはまめ」

「おう! ピスオじゃねえか。こんなところまで来るなんてどうしたんだ?」

「2月3日、ピスオのたんじょうび、おめでとうしてほしいまめ」

「2月ってまだ冬だろ? 俺はいけねえよ。季節さんにおこられちまう」

「だいじょうぶまめ、春さんがOKしてくれるまめ」

「春さんがいいって言ったのかい?」

「言ったまめ」

「じゃあ俺も2月3日だけ、ピスオのいえに遊びに行くぜ」

「まってるまめ」


 そういうとピスオを乗せたくじらさんはまたみなみへみなみへ向かうのでした。

 そして次に出会ったのは、可愛らしい女の子の秋さんです。


「秋さん、こんにちはまめ」

「あら、ピスオちゃん、このまえぶりね」

「2月3日、ピスオのおうちにくるまめ」

「2月? それって冬さんがいるわよね?」

「ピスオのたんじょうびまめ。春さんが来てもいいって言ってくれたまめ。あと冬さんと夏さんも来るまめ」

「夏さんも冬さんも来るの? なら行こうかしら」

「まってるまめね」

「これでみんな来てくれるまめ。くじらさん。おうちに帰してほしいまめ」

「わかったよ」


 くじらさんはうれしそうに塩を吹き、来たみちをもどっていきます。

 しばらくするとおひげの生えた季節さんがピスオの前にあらわれました。


「君がピスオくんかい?」

「そうまめ、だれまめか?」

「わしは季節さんだよ」

「季節さんまめか。はじめましてまめ」

「はじめまして。春から聞いたけど、今度みんなを集めてたんじょうび、おめでとうをやるんだって?」

「やるまめ」

「それはほかのばしょがこまってしまうんじゃが」

「そうまめか。だったら、季節さんも2月3日にくるまめ。それでかいけつまめ。たのしいまめよ」


 季節さんはちょっとだけ悩みました。


「こうしたらいいまめ。その日は1日だけ、どこのおてんきもあったかさもおんなじにするまめ」


 季節さんはなるほど! と手をぽんとたたきました。


「それはよいアイディアじゃ。わしもじつはたんじょうびおめでとう、したくてたまらなかったんじゃ」

「するまめ。するまめ」


 ピスオは春さん、夏さん、秋さん、冬さん、そして季節さん、ぜんいんにいわってもらえることになりました。


 そして2月3日。ピスオのお城ではさむかったり、あつかったり、ちょうどよかったりといそがしい気温でしたが、みんなでたのしくたんじょうびパーティーができたのでした。


 めでたし めでたし。

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