第4話 早速チートを開眼する

冒険者に登録した僕は、宿の確保が最初の仕事だった。

なぜ冒険者登録を先にしたかと言うと


『はい。確認出来ました。冒険者のコウさんですね。

では、冒険者割引を適応させてもらいますので、20Sになります。』

宿屋のカウンターで対応してくれている人に銀色の硬貨を2枚渡す。


『現金で、お支払ですね。

では、お部屋ですが、3階の角部屋308です。

どうぞ、ごゆっくり。』

そう言って、鍵を渡された。

鍵は、前世でも見覚えのある感じの形だった。

この鍵を食堂で見せると冒険者は、無料で食べられるらしい。

冒険者組合様々だな。


部屋に籠ると、お楽しみのチート能力の開眼を試してみる事にした。

15歳を迎えるまで能力は開眼しないのが、この世界では当たり前なんだとか。

能力を開眼なんて、ファンタジーだ。しかも15歳。

よくあるラノベと同じじゃないか。

偶然のなのか?まぁ、どうでもいい事だけど。


僕はベッドに座ると胡座をかく。姿勢とか何でもいいみたいだけど、前世のイメージからなのか、これが精神統一に適している様に感じたから。

目を閉じて、自分の中の何かに働き掛けると、それはあっさりと応えた。


【能力、異次元収納LV1。転移LV1。金は力なりLV1を開眼】

頭の中に響き渡る様に聞こえた。

前の2つ、異次元収納と転移は、チートあるあるだし、分かりやすい。

イメージする事で、能力は発動するみたいで


「うわっ、距離短っ。」

転移をしてみたら、ベッドから、隣のテーブルまで移動した。距離にして1m程度。

これが役立つのかは、実際に使ってみたけど、いまいち分からない。バトルとかなら、相手の裏を取れるから役に立ちそう。


「何か、ヌルッとした。」

異次元収納は、何もない場所へ手を伸ばしたら、薄い膜みたいなものを突き抜けた感覚とヌルッとした感覚があって、向こう側には、何か空間が拡がってるみたい。

肘から先を動かしてみたけど、何も触れる事がなかった。

これ、便利だな。

村を出発する前に開眼してたなら、手ぶらで移動出来たのに。

2つの能力は、名前から予想は付いたけど、金は力なり?なんだそれ?名前もカッコ悪いし。

本当にチート能力なんだろうか?


宿を出て歩く事、数分。

目の前にあるのは、図書館。

異世界でも図書館はある。そして、冒険者向けの図書館は、ギルドと併設されているので、24時間開いている。何て便利なんでしょう。この世界の冒険者は優遇されてるな。


さて、どうして図書館に来たかと言うと、能力について調べる為である。

僕の頭に響いた声は、僕に限った事ではないらしく、みんな能力を開眼すれば聞こえるらしい。

なので、開眼した能力を記した本があると言う訳。

本とは言うけど、それは紙の束を纏めた物ではなく


「噂には聞いていたけど、タブレットだと。」

そう、四角い板に触れると文字が浮かび上がると言うタブレット式だった。ファンタジーだけどハイテクな物をまた、見付けてしまった。


そんな事で、いちいち驚いていると田舎者丸出しだな。何事もなかったかの様に装い、タブレットに手をかざすと、目次らしき物が浮かび上がったので、金は力なりを検索する。

だけど、反応がない。

試しに


【転移。レベルに応じた距離を一瞬で移動が出来る。★4】

最高が★5だから、かなりレア能力みたいだな。

って、違う。そうじゃなくて、転移が調べられたって事は


【異次元収納。レベルに応じた量を異次元に収納出来る。★5】

おぉ、異次元収納は最高レベルだし。

って、違うから。

2つの能力を検索したら、レア度が高くても見付ける事が出来た。

と言う事は、金は力なりは、今までにない能力と言う事だな。

これは、参った。能力の能力なんて、ご都合主義で教えてくれればいいのに分からない。

くそ、ファンタジーなのに。


再び宿に戻ると能力を発動してみる事にした。


【金は力なり。】

イメージすると頭の中に色々な事が流れ込んでくる。

でも、言葉ではない。ニュアンス?何だろう?何となく分かるって感じ。

でも、この能力は、かなりクセが強いな。

しかもこれ、バトル向けな気がする。


割りと平和な異世界なのに、自ら危険に飛び込んで行けって、あの神様。言ってた事と違うじゃないか。

でも、やるしかないか。

確かに、お金は大切だ。幸せは、お金では買えないとか、前世でも今世でも言うけど、それは偽善だ。

先立つものがなけりゃ、不幸に決まってる。



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