第3話 僕は冒険者になる

村からの旅は、順調そのもの。

街道を歩いて行けば辿り着くし、そもそも街までは、1日程度で着くんだから。

そう、割りと近い。

でも感動の別れをしたのには訳がある。

街に出て何をするかと言うと、僕は冒険者になるつもりだ。

ファンタジーにありがちな冒険者は、魔物を倒したり、巨大な勢力と闘ったり、時には傭兵の様な事をしたり。

もちろん、そんな仕事もあるけど基本的には雑用係と言うのが、この世界の常識だ。

誰々さんにコレを届けて欲しい。とか、材料を採掘してる所まで行って、買ってきてくれ。とか、お使いが主な仕事。


魔物退治なんて、国の騎士様たちが主にしてくれるし、戦争なんて少ない。

冒険者に全く危険がないかと言えば、そうではない。

街道を外れれば、魔物も出るし、人気のない場所なら盗賊なんかも出たりする。

でも、普通に暮らしていれば、魔物に襲われるなんて、熊に襲われる位のレアケースなんだから、冒険者の危険度の低さは、理解出来てるつもりだ。


街に入った頃には、日は暮れ掛けていた。

日の出と共に村を出たけど、このくらいの時間になるのは、想定内。むしろ、順調に辿り着いた位だ。

数年前から、父さんの畑の手伝いをしたり、近所のお婆さんの家の水汲みとかを手伝って、体力を付けていた成果だと思う。

頑張れば、いつかは報われる。だから、頑張る。


街に入ると冒険者ギルドへ向かう。

目立つ建物なので、すぐに分かった。

街の入り口に建ち、大きく頑丈な建物が冒険者ギルドだ。

冒険者ギルドとカッコいい言い方してるけど、ハローワークと同じ。仕事を探してる人へ仕事を斡旋してる場所なんだから。


冒険者ギルドに入ると早速、受け付けへ向かう。

この時間でも受け付けをしてくれるのは、ありがたい。

血生臭い仕事は少ないけど皆無ではない、この世界。

警察がいればいいけど、警察に当たる騎士様たちの数は少ない。

街に駐留するのは所謂、地方公務員的な扱いなんだし、行きたがらないと言うのも理由だろう。

そんな時に案件を解決するのが、冒険者と言うわけ。

その冒険者を斡旋するギルドが夜に閉めてちゃ始まらないからね。

業務縮小してるけど、24間対応してくれる。


『ようこそ、冒険者ギルドへ。

今日は、登録?』

受け付けのオジサンは笑顔だ。ただ、威圧感が半端ない。デカイし、厳つい。

僕なんかより、よほど冒険者に見える。


「はい。さっき、この街に来たばかりなんです。

登録だけでもと思ったんですが、してもらえますか?」

低姿勢で答えると


『礼儀正しいコだな。冒険者に憧れてくる奴らなんて、無茶苦茶な奴ばかりなのに。

さぁ、ここに手をかざして。』

オジサンに促されて、丸い水晶玉に触れると透明な玉の中に大量の文字が流れていく。


『アスター第6村のコウで間違いないか?』

アスターに限った事かもしれないが、村だろうと街であろうとも産まれた子供は全て、登録を行っている。

それを水晶玉で照合したんだ。

ファンタジー世界なのに妙にハイテク。

ただし、原理は魔法と言うチグハグな感じ。


「はい。間違いないです。」

そう答えるとオジサンは


『若き冒険者に幸多からん事を。』

と僕へ祝福の言葉をくれた。

決まり文句なのかもしれない。それでも僕は嬉しかったのを何時までも覚えていると思う。

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