第4話君の秘密
火曜日、仕事の終わりが遅くなり、作るのも面倒なので、いつものショッピングセンターへお一人様で。
夜の八時を回ってるのに、買い物客はそれなりに。僕の様な客もいれば、カップルが仲良く連れだって買い物する姿も見える。
羨ましく思いながら、僕の足は自然とペットコーナーに向いていた。
相変わらず太ましく、すやすや眠る猫の前に立つと、何故か安心感とホッとするような感情が芽生えた。
僕はケージをコツコツと指で叩いて、おい、起きなよと声をかける。だけど、そんなことお構いなしに眠りを貪っている。ちょっとは愛想の一つも振り撒かないと、ずっとケージの中だぞと嫌みを言っても通じる訳はない。マイペース過ぎるだろ? まあ、それは僕も一緒か。呼吸で上下するお腹の辺りを見ていると、なんとなく愛着が湧いてきた。
「お前にも良い出会いがあるといいな」と、一声かけて僕はケージを後にした。
すると、食材コーナーに向かおうとした僕の目に、ケージに向かう君の姿が飛び込んできた。
僕は慌てて近くの陳列棚に身を隠し、猫の前に佇む君に目を向けた。
優しそうな笑顔で、何やら語りかけているようだった。
まさかちょくちょく来てるのか? 売れてないか心配してるのか?
暫く猫との一時を楽しんで、満足そうな笑みを浮かべて、君は立ち去る。
僕はその後ろ姿を見送りながら、浮かんだ想いをゆっくりと咀嚼した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます