第4話君の秘密

 火曜日、仕事の終わりが遅くなり、作るのも面倒なので、いつものショッピングセンターへお一人様で。


 夜の八時を回ってるのに、買い物客はそれなりに。僕の様な客もいれば、カップルが仲良く連れだって買い物する姿も見える。


 羨ましく思いながら、僕の足は自然とペットコーナーに向いていた。


 相変わらず太ましく、すやすや眠る猫の前に立つと、何故か安心感とホッとするような感情が芽生えた。


 僕はケージをコツコツと指で叩いて、おい、起きなよと声をかける。だけど、そんなことお構いなしに眠りを貪っている。ちょっとは愛想の一つも振り撒かないと、ずっとケージの中だぞと嫌みを言っても通じる訳はない。マイペース過ぎるだろ? まあ、それは僕も一緒か。呼吸で上下するお腹の辺りを見ていると、なんとなく愛着が湧いてきた。


「お前にも良い出会いがあるといいな」と、一声かけて僕はケージを後にした。


 すると、食材コーナーに向かおうとした僕の目に、ケージに向かう君の姿が飛び込んできた。


 僕は慌てて近くの陳列棚に身を隠し、猫の前に佇む君に目を向けた。


 優しそうな笑顔で、何やら語りかけているようだった。


 まさかちょくちょく来てるのか? 売れてないか心配してるのか? 


 暫く猫との一時を楽しんで、満足そうな笑みを浮かべて、君は立ち去る。


 僕はその後ろ姿を見送りながら、浮かんだ想いをゆっくりと咀嚼した。


 

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