第18羽 怪獣王!?
桔梗が投げ入れた光の玉は、ふよふよと天井まで漂い、そのまま天井に張り付いて大きな部屋の中を照らし出す。
思ったより大分広い。
学校の校庭三つか四つ分は優にあるだろうか。
天井も高く、荒い岩肌の壁で作られている。
その灯りに照らし出された大きな部屋の、私たちの居る反対側の壁沿いに、何かがうずくまっているのがわかる。
そこに居るのは、黒々とした布で作られたゴツゴツとした表面の何か巨大な物。
うずくまっているせいで、ちょっとした丘くらいに見える。
ソレが私たちの気配を察知したのか、のっそりと動き出し立ち上がった。
「ごるるるる……」
喉を鳴らし、低くうなるソレは、例によってうさ耳は付いているが、大きな頭に巨体に見合わない小さな腕が付き、背中にはトゲトゲとした背鰭のようなモノが付いた二足歩行する恐竜のような姿。
そうか、門番と言えばドラゴンだよねぇ。
……というかアレって……。
「ゴジ〇だよねぇ……」
私がボソッとつぶやくと、それが聞こえたのか、桔梗たちも呆れたようにつぶやきだす。
「うーん、そんな感じかな」
なっとくいかない感じの桔梗。
(てかゴジ○知ってるのね)
「ゴジ○なのです?」
わかってない感じの椿。
「怪獣王かぁ、なんだかなぁ」
こちらも、なっとくしてない杏。
「んー……」
どうでも良いような胡桃。
そんな中。
「んまっ! んまぁ!! 怪獣王の真似事なんてッ! 不遜ですわね! 許せませんわ!」
ぷんすかと怒りながら長いタレ耳をゆらゆらと揺らし、蘭が怒っている。
「あれ? 蘭さまってゴジ〇好きなの?」
私のそばにいる桔梗にこっそり聞いてみる。
「あー、うん、私たちも映画とか好きだからね、外の出たときに映画館にこっそりとかね、アハハハ」
少し目が泳いでる、なんだろ、うん、息抜きは必要だよね、うん。
のっそりと身体を持ち上げ、巨体を揺らし、こちらに向き直るゴジ〇もどき。
背中に生えている背びれに淡い光が灯りだし、その光がだんだんと強くなっていく。
「あ、これは来るよね」
こんなところまで真似しなくてもいいのにね。
私がつぶやく前に桔梗たちは身構えている、わかってるねぇ。
ゴジ○もどきは、ゆっくりと首を持ち上げ、私たちに向かって禍々しい黒い煙を勢いよく吐き出した。
ゴウと音を立て、私たちを狙って吐き出された黒いブレスは、地面を削り土煙を上げる。
「ごる?」
不思議そうな声を出すゴジ○もどき。
目の前に、私達が倒れてないのが不思議なのかな?
大体、わかっているのに、わざわざ当たってやる義理もない。
桔梗達は、ゴジ○もどきを回り込むように散開して、ブレス攻撃を避けている。
私は、と言うと。
私の前には、地面をえぐるブレス攻撃をものともしない朱色の壁。
ゴジ○もどきのブレス攻撃を受けきり、翼のように広がると、中から望月を手にした私が現れる。
どうよ?
わざわざ当たってあげたわよ、ふふん。
まぁ、私が無事なのは、兎神さまからいただいた、長い布の
長いので首に巻くだけではなく、たすき掛けにもしている。
「ありがと、朱ちゃん」
私がそう言うと、布の端がヒラヒラと揺れる。
朱ちゃんも、望月と同じように意思疎通が出来るんだけど、望月みたいに(頭の中に)話かける事は出来ないみたい。
初めてヒラヒラされた時は驚いちゃったよ。
低い唸り声を出し、私の方に首を回し、ボタンで出来た無機質な感情のない目をギョロリとせて、身体を捻り太い尻尾を振り回して襲ってきた。
あちゃー、目があっちゃったからねぇ、私狙いかぁ。
腰を少し落とし、望月を下段に構えて。
「おりゃさっ!」
唸りをあげて目の前まで来たゴジ〇もどきの尻尾を、望月で下からすくい上げると、大きな炸裂音を立てその巨体ごと跳ね上がる。
耳障りな叫びを上げるゴジ○もどきは、尻尾を摘ままれたトカゲのように、巨体が浮き上がっている。
「断ち切れ! 水三日月!」
「燃やしつくすの! 放千火!」
蘭と椿の声が重なり、大きな三日月型の水で出来た刃が飛び、ゴジ○もどきの長く太い尻尾を切り離すと、切り口に火柱が上がり、切り離された尻尾はあっと言うまに灰になっていく。
大きな音を立て地面に崩れ落ち、尻尾でバランスをとっていた巨体は小さな腕では支えきれずにべったりと地面に這いつくばっている。
「ん! 岩顎!」
「くらえ! 閃光!」
胡桃の声とともに、地面から無数の岩の牙がゴジ〇もどきの体を捕らえ、桔梗の目眩ましが入るる。
「ゴぁ!」
ゴジ○もどきは立ち上がるのを諦め身体をくねらせもがくと、大口を開け黒々としたブレスをむちゃくちゃに吐き出してきた。
私は、狙いを外すために軽く横に移動するが、ゴジ○もどきは体をくねらせデカイ頭を振るってブレスが追ってきた。
「
『……応』
私が望月を地面に突き下ろすと、勢いよく体が高々と舞い上がる。
普通に跳んだだけでは、こんなに高くは跳べやしない。
地面を"突き崩す"のではなく、"突き押す"イメージでやってみたんだけど上手くいった。
天井近くまで舞い上がると、朱ちゃんが翼の様に広がり、望月を構えた私を空中に固定する。
ふっふっふ、中二病が発症してたら
「……ちょっと思ったンだけど、朱ちゃんって、ひょっとして天の羽ごモガモガ」
朱ちゃんに口を塞がれモガモガしてしまいましたよ、どうやら内緒らしい。
捕らえられたゴジ〇もどきが、もがき暴れだすと、胡桃の術で作られ、その巨体を捕らえていた岩の顎がミシミシと音を立て始めだした。
おっと! そう簡単にはやらせはせんぞ!
「おりゃあぁーーー!!」
気合いもろともグンッと急降下して、デカイ頭を打ち据えるのと潰れた饅頭のように、ひしゃげ潰れる。
そして、私の攻撃が通ったと同時に。
「風旋脚!」
錐もみのように回転をした杏の蹴りが、ゴジ○もどきの頭を細切れに粉砕した。
はらはらと布切れが舞う中、一息をつく。
「なんか思ったより苦戦しなかったね」
そんな私の独り言に、側によって来た桔梗が笑いながら答える。
「上手く立ち回れるようになった、って事だよ」
そっか、でも皆の助けがあっての事だよね。
「ただし、油断や慢心をしない事ですわね」
腰に手を当て、蘭が言ってくる。
一応、強くなってるって認めてくれてるみたい。
「さて」
ゴジ○もどきのうずくまっていた先を見ると、そこには、大きな横穴がポッカリと口を開けている。
「この先だよね」
桔梗たちも、こちらを見てうなづいている。
私たちは、ゆっくりと暗い大穴の中に入って行ったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます