第13羽 討伐! 征伐! いざ! 出立!

 パッチワーク豚ぬいぐるみウサギモドキ(長い)を倒した私と胡桃は、「二日月の町」の外で魔物と戦っている、蘭と杏の元に急いでいる。


 ちょっと思いついた私は、走りながら胡桃に言う。

「胡桃! ちょっと試したいんだけどいいかな?!」

「? なに?」

「胡桃の術でさ、私をドーーンって飛ばせないかな? こう……地面からから打ち上げる感じで」

「……やって、みる?」

「え? ちょ? へ?」


 走る速さそのままで、地面から伸びている土の手のようなもので、私の腰のあたりを固定される。

「え? 胡桃? 胡桃ちゃん? 胡桃さん!? 心の準備――」


「いく、よ、どーーーーん!」

 胡桃の声と共に、ロケットの様にものすごい勢いで飛ばされる。

 飛行機とかのカタパルト射出とかこんな感じだろうか、ガ〇ダムとか。


「とか、考えてるばぁいじゃなぃぃいいいいい! ひょえぇぇえええ!」

 ゴウゴウと風を切る音がする、蘭たちが戦っている魔物が見えてきた。


 けど。


 ちょっとずれてる? ……え? どうしよう、え?

『……ハァ……』

 ちょっ! 望月にため息吐かれましたよ!


 望月を持った手が誰かに引かれるように動き軌道修正される、どうやら望月が引っ張ってくれたらしい。

「おぉう、モッチー、サンキュー!」

『……』

 えぇい! 無口な奴め!


 正面に魔物が見える! 私は、気合いを込めた雄叫びをあげる!

「おりゃぁああぁああああああああ!!!!」


 魔物の手前で一度地面を蹴り、体制を低くして、下から魔物の巨体を突き上げると、鈍い炸裂音と共に、魔物のがくの字になり打ち上げられる。


 魔物は耳障りの悪い叫び声を上げているが、私はそれよりも大きな声で、杏と蘭に呼びかける。

「杏! 蘭! 撃って!」

 わたしの、声に我に返る、杏と蘭。

「『風穿』!」「『水鉾』!」

 二羽の声が重なる。


 蘭の放つ無数の水の槍が魔物を貫き、杏の風を螺旋状にまとった蹴りで、魔物は細切れのボロキレになり散っていった。


「倒せ……ましたの?」

「そうみたい……だよね?」

 はらはらと、ボロキレが舞う中、顔を見合わせる二羽。


「わはは、実は”望月”の力なのだよ、諸君」

 望月を手に、片手を腰に当て、仁王立ちのうえドヤ顔で言う私。

 隣には、胡桃がならんで同じようにフンスッと言った感じで立っている、たぶんドヤ顔。


「どういう事ですの?」

 蘭さまの問いかけに、私と胡桃は、もう一体の魔物を倒したこと、望月の力の事を話したのでした。


 **********


『二日月の町』に戻った私たちは、合流した桔梗と椿にも事の顛末を説明した。


「と、言うわけなのだよ、諸君」

「そう、なの」

 望月を片手に、無い胸(うっさい!)を張る私と、隣に居る胡桃、どやどや~。


「なるほどね、『神杵しんしょ 望月もちづき』その名に違わずだね」

 うんうん、うなずいてるのは杏。


「魔物を倒す手立てが出来たのは行幸だよ」

「なのですね、お手柄なのです」

 こちらは桔梗と椿、早く駆け付けたかったと、悔しがっていた。


「さすが御神器の力ですわね、……莉乃と胡桃が、何故ない胸を張ってるのか理解できませんですわ」

 こちらは蘭さま、手厳しいですわ。


 そして、ちょっと顔をしかめ、たれ耳をユラリとゆらし。

「ところで、何で魔物に向って飛んでらしたのかしら? あなたはイシツブテですの? 大声を出して、魔物に気が付かれたらどうなさったの? 撃ち落されでもしたらどうなさったのかしら? 勇気と無謀は違いますわ! 無茶はなさらないでほしいのですけど? まったく! ……心配するでしょう」

 矢継ぎ早に文句を言ってくる蘭さま。


「あ、うん……ごめんね」

 責められましたよ……、ココは素直に謝らないとね、心配してくれたんだろうし、……アレ? 最後デレた?


 **********


 魔物が襲撃してきた次の日、私たち(桔梗たち四羽と私)は、二日月の町の中を歩いている。


 私は前の日に、胡桃から水薬(ポーション的な)をもらって飲んだけど、なにげに精神的な疲労も激しいみたいで、私はグデグデと桔梗たちの後に付いて歩いている。

 まぁ、魔物なんてものが来ましたからね、迷惑ですね。


「着いたよ」

 桔梗の澄んだ声がする。


「おぉ!? こ、これは!」

 小さな馬? ロバ? 囲った柵の中に、なんかいっぱい居る! 可愛い!


 私たちの姿を見たうさちゃんが、ほろ付き荷車を引いた小さい馬だかロバだかを連れてきた、荷車の中には荷物、私のもある。


「馬の松五郎さんと杉二郎さんなのです」

 馬? の鼻面をなでながら、椿が話してくれた。

 体高って言うんだっけ? 一メートルちょいくらい、小さいなって思って聞いたら、馬はこの大きさだって言われた。

 原種ってやつなのかな?


 私も、椿のマネをして二頭の馬の鼻面をなでる。

「よろしくね、松五郎さん、杉二郎さん」

「ボヒヒン」

「ブヒヒン」

 変な鳴き声だな、ホントに馬か? 君たち。


「莉乃ちゃん、早く乗って、後ろがうるさくて」

 手綱を握って笑いながら呼んでいるのは、杏。


「グズグズするんじゃありませんわ!」

「早く乗るのですよ~、蘭がうるさいのですぅ~」

「んまっ! 何ですのなんですのっ!」

 荷台から顔を出してるのは蘭と椿、桔梗は苦笑いしてるだろう、胡桃は……中で寝てそうだ。


「ごめんごめん、今行くよ」

 蘭と椿の様子に、笑いながら答える。


 今日、この日、私たち一人と四羽は魔王の根城へ出発する。

 私に、私たちに……、いや今はあまり考えこまない様にしよう。


 私は、手にしている”望月”を握りしめ、桔梗たちが待っている、馬車の荷台に乗り込んで行った。

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