第7羽 莉乃、剥かれる

 えー、向日葵さんの家に帰ってきた莉乃です。

 私、今、向日葵さんとその他大勢のおばちゃんウサギたちに、裸にされております。

 何でこんな事になっているかと言うと……。




 私たちが、兎神様の御屋敷から帰ってくると、向日葵さんが家の前に待っていた。


「お帰りぃ、莉乃ちゃん、さぁさぁ! 入って入ってぇ!」

 挨拶も早々に、私は向日葵さんに押されるように家の中に入れられて。

「あら! この娘さんが莉乃ちゃんなのね」

「まぁまぁまぁ! 大きいこと!」

 と、こんな具合に数羽のおばちゃんウサギたちに取り囲まれて。

「はい、脱いで脱いで」

 と、服を脱がされたわけです、下着までです、はい。


 さすがに、スッポンポンは勘弁してもらえて、布を巻いているわけでありますが、何この状況、事案ですよジアン。


「これを着てみてちょうだい」

 と、向日葵さんが、何かを差し出してきた、服? 新しい服? え? ニコニコとみんな笑っている。

 確かに、兎神様の御屋敷に出かける前、向日葵さんの家で、体の寸法を測られてたけど……、早すぎない? おばちゃんパワーかしら。

 それにしても、見られてると恥ずかしいじゃないか。


 モソモソと、もらった下着やら何やらを着てみる、途中で「ここはこうするの」とか、「そこは、紐で絞めて」とか指導が入る、うむむ。

 出来上がったのは、作務衣っぽい小豆色の上着に、濃紺で白い小さな花柄がちりばめられているモンペっぽいズボン。

 ちなみにパンツはカボチャパンツだった。


「おばちゃんたちの手作りだよ! 替えの服と、替えの下着もしっかり作ったからね!」

「まぁまぁ、似合うわねぇ」

 向日葵さんが呼びかけらしい、みんなノリノリで作ってくれたそうだ。


「あ、ありがとうございます、みなさん」

 実は、むこうから着てきた服は汚したくなかったし、下着の替えとかどうしようと思っていたところだ、本当にありがたい。

 みんな、『兎世界に迷い込んだ気の毒な娘』くらいに思っているんだろうなぁ。


 着ていた服は、向日葵さんが「洗っておくわねぇ」と言って持って行ってしまった、下着も。




 慌ただしい着替えが終わって、ガヤガヤと帰っていくおばちゃんたちを見送り、茶の間に入ると、桔梗と椿が居た。

 私がおばちゃんたちに剥かれている時に、のんきにお茶をしていたらしい。


「似合うじゃないか、莉乃、……うわわ」

 のんきにそんな事を言ってくる桔梗を抱きかかえる、ハハハ、こ奴め。


「ありがたいけど、いきなりだったからね~、びっくりしたよ」

 干し芋をつまみながら、お茶をすする、おいしいなぁ。


「で、これからどうしよう」

 桔梗の手をスリスリとしながら、これからの話をしようと切り出してみた。


「う、うん、そうだな、魔王を倒したいのはもちろんだ、だが強敵なのはわかっている、危険だと判断したら逃げるのも頭に入れておいてくれ」

 うんうんと、うなずく私と椿、椿は真剣な顔、私は干し芋かじりながら。


「倒せない場合でも、『神器 明けの玉』は奪還したい、これも難しいとは思うが……、神器さえ取り戻せればこの兎世界は、まだ大丈夫なはずだ、……莉乃、そろそろ私を膝から降ろして、座りなおしてくれ……」


 えー、ちゃんと聞いてるのに、スリスリはしてるけど。

 私は椿の横に座りなおす。


「こほん、何にしても最終目標は、魔王の撃破、『神器 明けの玉』の奪還だ

 、それと……」

「莉乃を鍛えるのですね、修練ですね、修行でなのですね、ふふふ」

「そう言う事だね」


 二羽は私を見ている、椿はニヤニヤしている、ぐぬぬ、修行かぁ。

「ハイ、オネガイシマス」

「「ぷっ」」

 私の顔を見て、二羽は噴き出している、だってねぇ。


 そんな二羽を見て、私がちょっと膨れていると、向日葵さんがポテポテと部屋に入ってきた。

「お客様よぉ、巫女さんたちが御用ですってぇ」

「?」

 それを聞いて、私たちは外に出て行った。




「何をする気だ! 蘭!」

 桔梗が声を荒げている、相手は。

「この人間の実力を見る、と言ったでしょ、桔梗」

 ひょうひょうと答えるのは、桔梗たちと同じ白の着物に薄紫の袴スカートを着た、たれ耳ロップイヤー、名前はらんと名乗ってきた。


 向日葵さんの家の外に待っていたのは、十三羽のウサギたち。

 兎神様が言っていた、桔梗と椿を含めた『十五月の巫女』たちだった。


「心配なさらずとも、手加減はしてさしあげますわ、怪我はするかもしれませんが」

 そう言って、オホホホっと笑う蘭、あれか! お嬢か?! 令嬢か!? 蘭さま美味しいです、ありがとうございます。


「何故か、背筋がゾクッとしましたけど……、よろしいですわね? 莉乃さん」

「よろしいですわね、って言ったって」


 なんか、広場に来ちゃってるし、うさちゃん達は離れて見てるし、桔梗も椿も他のうさちゃん達となんか話聞いてるし、騒ぎを聞きつけたか村のうさちゃん達も見物に来てるし、何のイベントだか。


 キョロキョロしてうんざりしている私をよそに、蘭は筒を取り出し中の物をこぼし始めた。

 筒の口から流れ出る液体は無色、おそらくなんだけど……。


 地面に落ちる前に一つにまとまり浮かび上がり、ソフトボール大の塊となり、蘭の体の周りを漂い出した。


「えー、と、何ですかね蘭さま、それは」

 顔をしかめて質問してみる、これどうみてもハンデ有りすぎだよね。


「さま?! あ、こほん、ワタクシは水術が得意なので使わせていただきますわ、よろしくって?」


 術有りで、私無し、しかも戦った事なんてないのよーーーー!

「え?! 私、丸腰なんですけど! てゆーか、反則でしょ?! よろしくないです! なしなし!」


 そんな私をよそに、にっこりと微笑む蘭さま。

「問答無用ですわー! 行きますわよ、オーッホホホホ!」


 よし、私このイベントが終わったら蘭さまモフるんだ……。



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