第10話 チャールズの失脚に・・・

夏の終わりごろ、

ジュンスは昔の友人から

チャールズ・スペンサーが

一緒に暮らしていた恋人のことで、

政界の重鎮であった父親と衝突し、

その輝かしい後継者の地位を

失ったらしい・・・

と云う話を耳にした。


そしてジュンスが

プリンス・チャーミングに

再び会えたのは、

熱い夏が過ぎて、秋も深まり、

枯葉が舞う季節になってからだった。



ある日、ジュンスは

街中でプリンス・チャーミングの姿を

遠くに見かけ、追いかけた。

しかしすぐに見失ってしまった。



それからジュンスは

クラブ・パラダイスへ毎日のように通い、

プリンス・チャーミングを指名し続けた。

そんなジュンスに根負けし、

オーナーは一度だけ、

プリンス・チャーミングと

会う機会を与えた。



「チャールズとのこと、噂で聞いていたよ。

これでも君のことが心配で、ずいぶん探したんだ」


プリンス・チャーミングは

チャールズを愛していたとは言い難かったが、

自分が原因で失脚したことを知っていたので、

やはりつらかった。


憂いに沈むプリンス・チャーミングを見て、

ジュンスは、サーシャの時と同じように

自分が世間の悪意から

守ってあげたいと思った。


「僕は君を、必ず護ってみせる!」

と、唐突に言い放つと

ジュンスは

目の前の少年を

強く抱きしめていた。


しかし少年はその言葉を聞いて、

少し怒ったような表情をした。

「僕を憐れんで、

そんなことを言うんですか?


僕はそんなことを、

望んでいるわけじゃない!」

と冷たく言い放った。


「どんなことがあろうとも、

どんなことをされたとしても、

僕の心は自由だったから、

決してつらくはなかった。


自分が決めたことだったから、

自分で納得できた。


だけど僕が原因で

チャールズが失脚したことは、

納得なんて出来るわけがない。


だって彼は、馬鹿みたいに

彼の父親の前で

僕を愛してるなんて

言うんだもの。


ただの遊びだって言えば、

それで問題にならなかったし、

失脚することも無かったんだ。


だから同じような思いは、

もうしたくない。

僕には近づかないでほしい」

とプリンス・チャーミングは言った。



「僕と一緒にいれば

あなたもチャールズと同じように

ゲイだと噂されますよ。


あなたの国では

同性愛は

禁止されていて、

ご法度だ。


あなたはその地位を

失うことになる。

それも僕のせいで・・・


そうなったら、世界中が

僕らの敵になります。


あなたの国民は言うでしょう。

『あの者が、我々の誇りであり

希望であった皇子を

堕落させ、我々を不幸にした。

あの者を許すな!』

と・・・」


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