第8話  プリンス・チャーミングとジュンス「写真」

その日、プリンス・チャーミングは

ジュンスと約束をしていたわけではなかったが、

また図書館へ行くつもりだった。


最近、ジュンスとプリンス・チャーミングは

時々図書館で会うことが多かった。

約束をして会っているわけではなく、

偶然会うのだから、

問題ないとふたりは思っていた。


そしてその日、プリンス・チャーミングは

図書館へ出かける寸前に

突然、オーナーから呼び出しがあり、

先に特別室へ行くことになった。


彼はその日、

休みをもらっていたので、

「なんだろう?」

と不思議に思いながらも、

オーナーが待つ

特別室へ向かった。



特別室のドアを開けた時、

そこに先客がいることを知り、

プリンス・チャーミングは驚いた。


そこにいたのは、

プリンス・チャーミングに

異常な執着心を見せる

大富豪の息子

チャールズ・スペンサーだった。


ドアが閉められ、

オーナーが重たい口を

開いた。


「プリンス・チャーミング、

君がパラダイスの規則を破って、

会員と外で秘密裏に会っていると、

申し立てがあってね」


チャールズが意味深な笑顔を

プリンスに投げかけた。


オーナーは静かに、

プリンス・チャーミングに

数枚の写真を見せた。


ジュンスと楽しそうに街中を歩く姿、

二人で楽しそうに食事をする姿、

そして別れ際のハグをしているところも

撮られていた。


「君は知らなかったのか?

この写真が出回ると、

この会員は王位継承権を

たぶん失う・・・」


「エッ・・・!」


「彼の国では、同性愛は御法度なんだ」


「僕たちはそんな関係ではありません」

と、反論を試みたプリンス・チャーミングだったが、


「事実など、関係ない。

この写真を見て、受ける印象が問題なんだ。

この写真を見たら、ほとんどの人は

君たちの関係を、疑う・・・」

と、オーナーは冷たく言い放った。


「しかし幸い、この写真の持ち主は、

うちの会員だ。彼は、条件によっては

この写真を公表しないと、言ってくれた」


「最初に言うが、もう二度とジュンス皇子と

個人的に会うことは許さない。

個人的には会わないことを、

誓ってもらう。

そしてもし破れば、ジュンス皇子は

絶対王になれないと思え。


そしてこの夏は特別に

スペンサーさまと一緒に

バケーションを過ごすことを許そう。


君がスペンサーさまの好意を

受け入れるならば、

この写真は

公表しないと約束してくれた」


この場の勝者は、すでに決まっていた。

チャールズは静かに

プリンス・チャーミングの手を取り、

「さあ、話し合いはこれで終わりだ。

車を用意してあるから、

さあ、行こう!」

と言うと、困惑している

プリンス・チャーミングを引き寄せ、

抱きしめた。

「オーナーと話はついているから、

君は何も心配しなくていい。

楽しいバケーションを過ごそう!

今年の夏は、君と僕は

ずっと一緒だ」

と、楽しそうに言った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る