第4話 体罰
その日、ジュンスとサーシャは
いつものように
レッスン室で
おしゃべりをしたり
楽器の練習をしたりしながら、
楽しい時を過ごしていた。
そこへ突然、
6~7人の生徒が
群れをなしてやってきて、
「風紀を乱す不埒は奴らめ」
と言い、
「これからお前たち二人を
我々生徒会の裁判にかけてやる」
と言い、
外へ連れだした。
連れてゆかれた先は、
教師たちの目が届かない、
学校から少し離れた
森の中だった。
彼らに何を言っても
無駄だということを
ジュンスはすぐに悟った。
初めから有罪ありきの
裁判なのだ。
彼らのリーダーは
初めからサーシャとジュンスに
罰を与えるつもりだった。
とりわけ彼はサーシャに、
むごい罰を用意していた。
「わたしの好意を踏みにじって、
こんなことをするとは、
サーシャ、失望したよ。
わたしは今まで、お前を
甘やかしていたようだ。
これからは、こんなことは
絶対に許さない!」
と言い放ち、
サーシャのシャツのボタンを
引きちぎった。
シャツの下から現れた
サーシャの上半身には、
痛々しい傷跡が
無数にあった。
彼らは指導と称して、
気に入らないことがあると
サーシャを呼びつけ、
いたぶっていたのだ。
そして今日は、風紀を乱す
不埒なことをしたと
云いがかりをつけ、
もっとひどいことをしようとしていた。
しかし彼らは、
大変な過ちを犯したことに
まだ気づいていなかった。
ジュンスを甘く見過ぎていた。
ジュンスは彼を押え付けていた、
体格の良い2人の少年を
いとも簡単に投げ飛ばし、
次の瞬間には
他の少年たちにも攻撃を加えていた。
サーシャに罰を与えると言って、
不埒なことをしようとしていた少年は、
ジュンスの稲妻のようなキックを受け、
何メートルも先に飛ばされた。
ジュンスは陰謀うづまく宮殿で、
その身を守るために
幼いころから武術の修業を
無理やりさせられていた。
こんな喧嘩の仕方もわからないような、
馬鹿な少年の群れを片づけることなど、
朝飯前のことだった。
少年としては華奢で
美しすぎるサーシャ。
思春期の欲望をかかへ、
いつもイライラしているような
少年たちの中で、
欲望のはけ口にされ、
どんなにつらかっただろうと
ジュンスは思った。
初めて、こころから
護ってあげたいと思える
存在に出会い
生きがいを見出した
ジュンスだった。
その日からジュンスは、
サーシャを守ることが、
唯一の生きがいとなった。
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