本物川通信

第1話 アレと本物川

本物川はアレの一番のお気に入りのおもちゃだった。

この動物は人前に出せばしんでしまう。おみ足のように見えるものを使い踊ったりはしているのだが、その動画を誰彼構わず拡散してしまうのだから、うっかりしていると本物川に触れてしまう。しかし、誰もが本物川の全容を知ることはできていない。

アレがどこで本物川を捕まえて来るのか、僕は知らない。ただアレに本物川たちが虐げられ、弄ばれてヘドロのようなものになっていると思われる。これを掃除しても何処からともなく本物川が家に現れて、あのおみ足が踊っているのだった。おそらくアレは本物川の生態を知る唯一の生物だろう。

本物川はネット上では生物というより妖精に近く、腐植土が層をなしていつもじめじめした所を好むという。本物川を好むアカウントたちをよく観察すれば、ボーイズラブやレズの類いの娯楽を好んでいるし、同人誌や創作活動に勤しんでいる人が多い。そして本物川本人を自称する人間はライトノベルを出版しているのだ。