第103話【思い出話①】

「遅かったじゃねぇかぁ・・・」


酔っ払ったダランが待つ寮の自室に帰って来たドン。


「トーホクは?」

「お前が出て行った後に野次馬根性で後を追ったよ」

「・・・面倒な」

「すまないね、面倒な奴で」

「ども・・・」


トーホクとハックも部屋に入って来た。


「よぉトーホク、人の過去を聞いて面白いか?」

「面白いね、実は興味が有ったんだ」

「興味?」

「そうだ、何で君はこの神州進撃会に入ったのか?

付き合いは長いが教えてくれないじゃないか、結構気になっているのに」

「・・・」

「そーだな、ドンちゃんの腕はすげぇ良いからもっと良いギルドなり

職場なりが見つかるじゃねぇか、へっぽこで修理屋って言う

びみょーな仕事しか出来ない俺と違って」

「僻むな」

「悪いな」

「構わんよ」

「だが私もタダで教えろとは言わない、何時か聞こうと思っていたし

交換条件と行こうか」

「交換条件?」

「私程の記者の能力が有りながら何故、神州進撃会と二足の草鞋を履いているか

理由を答えようじゃないか」

「・・・・・」


黙るドン。


「・・・あー、トーホク?悪いんだけどよ、言っていいか?」

「如何したダラン?」

「お前ってそんなに記者の腕が良いのか?」

「・・・・・」

「正直俺もそう思う」

「・・・・・」


チラリとハックを見るトーホク。


「え、えっと・・・俺はトーホクさんスゲー人だと思いますよ・・・」

「・・・・・」


酒瓶を手に取るトーホク。


「呑もう」

「おい、馬鹿ラッパ飲みはヤバい」


明らかに自棄酒を飲む姿勢に慌てて止めるドン。


「呑ませろ」

「わ、分かった!!喋ってやるし聞いてやるから瓶を置け!!な!?」

「・・・・・」


酒瓶を置くトーホク。


「私が記者を志したのはその昔、言葉で人を制する人を見たからだ」

「言葉で人を?」

「あぁ、子供の頃だったからうろ覚えだがな

掻い摘んで話すと乱暴者が居て幅を利かせていた、そこに中年の紳士がやって来て

その乱暴者を注意した、当然乱暴者は怒る訳だが、周囲の人々が紳士を庇い始め

旗色が悪くなった乱暴者は去って行った

その紳士がカッコよく見えてな・・・それから私は勉強をして真実を追い求める

ジャーナリストに憧れたって訳だ」

「へぇ・・・・・それで何で神州進撃会に入ったんだ?」

「まだこの話には続きがあるのさ、正しいだけじゃない

この社会の残酷さが今の私の状況を生み出したんだ」

「・・・聞かせてくれ」


自棄酒を止める為に効き始めたドンだったが続きが気になって来たのだった。

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