第101話【継承の儀】

喫茶店で頼まれた飲み物を飲みながら三人は話をしていた。


「ほら、でぶ妖精には皿で出してやる」

「ありがとにょー」


マスターの好意に喜ぶでぶ妖精。


「じゃあ話を進めますね、ドンちゃんとカツが18と16の時

継承の儀が執り行われたんです」

「継承の儀?」

「剣を一つ作ってその剣の出来で後継者を決める、そういう儀式です」

「普通家って長男が継ぐんじゃないの?俺の家も長男が継ぐ予定だが・・・」


実家が農家のハックが故郷の兄を思い出しながら話す。


「ドンちゃんの家は実技を重んじる家柄だったんです

それで兄弟が生まれた場合、何方か優れた方に家督を継がせる

と言う事をしていたんです」

「珍しい事じゃないですね」

「そうなんですかトーホクさん」

「結構有る話だ、ですが解せませんね

ドンちゃんの腕はさっきも言った通り相当な物です

比べて負けるとは思いませんが・・・」

「普通ならばそうでしょう、ドンちゃんが作った作った剣は普通の剣でした

ですがカチが作った剣は短剣でした」

「短剣?」

「えぇ、そこで実用的なのは何方か、と言う話になったのです

継承の儀で何方が優れているのかと判断するのは

ドンちゃんの家の関係者による協議でした

親戚は勿論、私の親も協議には参加していました

話し合いの結果、真っ二つに意見が綺麗に別れたんです」

「ふむ、それで?」


ミンはカフェオレを飲み、呼吸を整えて言った。


「最後の一票を私が投じる事になったんです」

「・・・・・それは責任重大ですね」

「えぇ、本当に責任重大でした・・・でも私は・・・

カチの方に投票しました」

「・・・実物を見た訳じゃないのですがカチさんの方が良い作品だったのですか?」

「・・・・・」


俯くミン。


「・・・・・」

「如何したんですか?」

「分からなかったんです」

「分からない?」

「えぇ、先も言いましたが私は剣術の名家の娘でした

ですが当時の私は見分が浅く剣の良し悪しなんか分からなかったんです

今から見返せば良い剣悪い剣の違いは分かります」

「じゃ、じゃあどうやって貴女は二人を比べたんですか?」

「・・・・・」

「・・・人を見て判断しましたか」

「どういう事ですかトーホクさん?」

「カチさんとドンちゃん、どっちが良いか、と言う事で選んだんでしょう?」

「・・・恥ずかしながらそういう事です」

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