第95話【真の英雄】

”ドラゴンゾンビとの戦闘は長期戦となった。


「くっ・・・やるな・・・」

「そちらこそ・・・」


互いに決め手が無い。

私の防術はドラゴンゾンビに防がれる。

しかしドラゴンゾンビの攻撃は何とか回避出来ている。

ドラゴンゾンビの攻撃は稚拙で回避は容易だが

ボールドヒンは守備を固める作戦の様で攻撃のチャンスを潰してでも

自身をドラゴンゾンビに守らせる方を選んだ様だった。


一見すると臆病に見えるボールドヒンの戦術だが司令塔たる自身の

重要性を分かっていての行動なのだろう。

もしも臆病者ならば最初から名乗ったりしないだろうし

隠れてやり過ごすだろう。


「あいつを黙らせれば・・・」

「黙らせれば良いにょ?」


でぶ妖精がひょっこりと顔を出す。


「あぁ・・・だが・・・」

「じゃあ任せるにょ」


とことことでぶ妖精が歩き出す

あまり大きく無いからボールドヒンは気が付いて居ない

私もそれ所では無かったので気に留めなかった。

兎に角その後も私とドラゴンゾンビの戦いは続いた。


「そこに攻げ・・・ぐご!?」


唐突にボールドヒンが胸を押さえる。


「ぐご!?ごごご!?」


何か口をもごもごしていた。

私はその隙を見逃さずに棒をボールドヒンに叩き込んだ!!


「ぐが!!」


ボールドヒンは倒れた。

突然ボールドヒンが苦しみだしたのが幸いした。

私は何故ボールドヒンが苦しみだしたのか分からなかったが

直ぐにその理由が分かった。


「にょ~」


ボールドヒンの口の中からでぶ妖精が出て来た。

驚くべき事にこの勇敢なるでぶ妖精はボールドヒンの口の中に潜りこみ

無理矢理呼吸を止めさせて黙らせてくれていたのだった!!”


「「「いやこのオチはねーよ!!」」」


ハミングするハックとヴェンデスとでぶ妖精。


「魔物の腹の中に寄生したでぶ妖精の話は聞いた事ある・・・が

これ実際に在り得る事なのか?」

「でぶ妖精視点からみると起きている人の

お口の中に入るって難易度高過ぎるにょ・・・

そんな事する奴滅多に居ないにょ、と言うか無理なにょ」

「だよなぁ・・・」


その後パラパラとページを捲るも嘘っぱちの御涙頂戴の話が延々と広がり

大団円となった。


「なんだかなぁ・・・こんなのが売れるのか?」

「流行り廃りは俺には分かんねぇよ・・・」


呆れる二人とでぶ妖精だったが、この本はベストセラーになるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る