第5章【鐘の街の答え!!】

第60話【老人の夢】

一人の女が鬱蒼とした森の中を走っていた


『はぁ・・・はぁ・・・』


女の後ろから大きな猪が迫っていた、体には多数の切り傷が見られ

この猪が歴戦の猛者だと言う事を語っていた

女は手に持った弓で矢を放つが猪には通用しなかった

当たってはいるが意に介されてはいなかった


『糞っ!!』


手持ちの矢が付き、悪態を吐きながら弓を投げ捨てた


『はぁ!!はぁ!!』


女は必至に逃げた、逃げて逃げて開けた場所に出た


『ぐっ!!』


女は足を捻り、倒れた、猪は追いかけて女の元に近付いたその時


『やあああああああああああ!!!』


斧を担いだ男が猪の後ろから現れた、猪は振り返り男と対面した

男は斧を振りかざし、猪に叩きつけた

猪の肩に斧は命中し血が噴き出た


形容し難い猪の苦悶の絶叫が周囲に響いた


『ぐっ!!』


猪に振り払われ男は突き飛ばされ倒れた

そして倒れた男に猪は突撃した


『うっおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!』


男は真正面から猪の脳天に斧を叩き込んだ

猪は頭を両断されながら前に走り抜けてそして、倒れた


『や、やった!?』


女は男と猪の元に駆け寄った


『だ、大丈夫か!?』

『大丈夫じゃねぇよ!!腕の骨に罅が入ったなこりゃあ!!』

『は、ははっ、だがこの大猪を狩ったんだ報酬はデカいぞ!!

暫くは休んで御釣りが出るだろう!!』

『そうだな!!今日は帰って酒盛りすっぞ!!カヌラ!!』

『そうだな!!クハル!!』


――


「・・・・・」


クハルは寮の自室で目を覚ました、酷く懐かしい夢を見た

嘗て自分が若々しく森や山を駆け回っていた頃の夢だ

あの頃はギルドに入る事を女々しく思い

相棒と二人で様々な大物を狩っていた物だ


「・・・・・」


今の自分は起き上がるのにも難儀し

骨に罅が入れば一生残るであろう傷になるのは容易に想像が付く

そういえばあの頃の相棒に会っていないなと思う


「・・・阿保らしい、仕事しに行くか」


寮の部屋を出てギルドに向かう


「お、クハル爺おはよう」

「爺は余計じゃキョク」


朝食を持ったキョクと出くわすクハル


「朝飯は良いんですか?」

「あー喰いたい気分じゃないからの、ギルドに顔出すとするわ」

「そうか、気を付けてー」

「おー」


片手をぶらぶらさせながらクハルは神州進撃会に向かう

のっそのっそとゆっくりと、若い頃と比べ物にならない程ゆっくりと歩く

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