第59話【新聞記事】

「ねぇ新聞見た?」


ギルドには言って来るなりポートはキューに尋ねた


「見たよ、酷いもんね・・・」


新聞をぱさりと開くキュー


―セグラメント工房、工房長逮捕!!―


行方不明になっていたトールォ・セグラメント容疑者が

ワイン偽造及び保険金詐欺及び横領の疑いで逮捕されました

当容疑者は国外へワインを販売する際に年代を書き換えたワインを販売し

不当な利益を得ていると言う事は以前から疑われていましたが

この度、怪盗ホイップからの予告状を偽装し

100年物最高級ワイン『トワイライト』の偽物をどさくさに紛れて破損させる事で

『トワイライト』にかけていた保険金を詐取しようと疑いと

本物の『トワイライト』と工房の資金を持ち逃げしたとして

警邏に逮捕されました、一連の疑いに関してトールォ氏は―――


――


「いや、そっちじゃなくて」

「え?」

「こっち」


新聞を捲るポート


―お手柄でぶ妖精にでぶ勲章―


先日、セグラメント工房にて行われたパーティで

偽物の『トワイライト』の破損を防止した

都のギルド【神州進撃会】所属のハック氏とペットのでぶ妖精に

それぞれでぶ勲章が授与されました

でぶ勲章はキングでぶ妖精が良い事をしたでぶ妖精に授与する勲章で

中身はメダルチョコです、一流パティシエでぶ妖精が腕によりをかけて作った

チョコレートだったのですぐさまでぶ妖精は食べてしまい

『美味しかった』との感想を述べました

ハック氏は『寮に帰ってから食べる』とのコメントを残しています

ハック氏とでぶ妖精が偽の『トワイライト』の破損を防げなかった場合

トールォ氏の一連の犯行が明るみに出なかった可能性も有るので

警邏からも感謝状が授与され――


――


「・・・・・へぇ、やるじゃん」

「何かお祝いで作ってあげようか?」

「そうね」

「おはよー」


ハックがギルドにやって来た


「お、ヒーロー君のお出ましかぁ?」

「新聞に載るとか先を越されたかな」

「照れるにょー」

「ま、まぁね・・・

でも今回、俺はあんまり役に立てたって気がしないよ」

「何で?お手柄じゃない」

「だって一回も剣を振っていないんだぜ?」

「あー・・・でも剣を振るだけが冒険者じゃないよ」

「そうそう、人を救えたんだし、それで良しとしようじゃないの」

「そんなもんかなぁ・・・」

「そんなもんよ」


納得しかねる様子でハックはコルクボードを見て今日の仕事を探す

その顔は晴れやかだった

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