第44話【貝の街】

「にょよわあああ・・・おっかないにょおおお・・・」


歩き始めて三日目、どんどん貝の街が近づくにつれて震えるでぶ妖精

今ではポーチの中に引っ込んでぶるぶると震える始末


「・・・そんなに怖がらなくても良いだろ

何も取って食われる訳じゃないんですよね?」

「身の安全は保障されるよ、でも気味が悪い

君は貝の街について何も知らないんだなぁ」

「えぇ、実は俺、ヌベア持ってましてね

大っぴらにヌベアを売れるのは貝の街だと言われて・・・」

「あの街なら悪人は居ないからね、大っぴらにヌベアを売れると思う

でも欲しがる人が居るかは別問題じゃない?因みに幾らで売りたい?」

「7G以上は欲しいですね」

「私は買ってあげられないかなぁ・・・あ、見えた」


スルメが指差した先に白い街並みが広がっていた


「あれが貝の街ですか?」

「にょおおおおおおおん・・・・」


ふるふると震えるでぶ妖精


「変な街には見えない、寧ろ白い街並みが素敵だと思いますよ?」

「行けば分かるよ」


ハック達は貝の街へと向かった

近付くと街の異常がハッキリと見て取れた

どの家にも窓とドアが無い、唯穴が開いているだけだ


「・・・・・何でドアが無いんですか?」

「この街では盗みを働く人は居ないからね」

「・・・・・」

「”こんにちは”」

「!?」


住民に話しかけられた、が何か不自然だ


「こんにちは、カイに御会いしたいのですが宜しいですか?」

「”どうぞ、こちらです”」


スルメの問いに住民は張り付けられた様な笑顔で対応し案内してくれた


「・・・な、何なんですかあの人・・・」

「悪い心をカイ、この街の変わった魔法使いの事ね?

そのカイに悪い心を奪われて良い心だけになった人間よ」

「・・・何であんな風になるんですか?」

「人間って言うのは良い心だけじゃないって事よ・・・」


住民の案内でどんどん街の奥に進んで行くハックとスルメ


「”こんにちは”」「”こんにちは”」「”こんにちは”」

「”こんにちは”」「”こんにちは”」「”こんにちは”」

「”こんにちは”」「”こんにちは”」「”こんにちは”」

「”こんにちは”」「”こんにちは”」「”こんにちは”」

「”こんにちは”」「”こんにちは”」「”こんにちは”」


向かう途中で張り付けられた笑顔の人々に挨拶をされて異様な感覚を味わいながら

カイが居る神殿の様な場所に辿り着いたのだった


「ここにカイが居るの?」

「”ええ、この時間はここに居る筈です”」

「ありがとう」

「”いえ、困っている人を助けるのは人として当然ですよ”」


そう言って案内してくれた住民はその場を去った

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