七男ハックの七難八苦【のほほん冒険譚】

@asashinjam

第1章【冒険譚の始まり】

第1話【俺、冒険者になります!!】

「俺、冒険者になります!!」

「急に何言ってんだお前」


とある農家で唐突に末っ子のハックが宣言した


「そろそろ良い歳だし就職をするのは良い心がけだがな、冒険者って具体的に何するんだ?」

「俺、農家を継ぐなんて嫌なんだ」

「安心しろ、お前末っ子だからそもそも継げない」

「辛辣だなぁ兄貴は!!」


年が離れた長兄のハチが父親の代わりに応対している

他の兄弟達は末っ子の行く末は大して気にしていない様だ

彼等兄弟は仲が悪い訳では無く、彼等が薄情な訳でも無い

就職に失敗しても死にはしないだろうし無駄飯喰らいにならないのなら良いだろうと言う判断だ


「俺、冒険者になって色んな物を見たりとかしたいんだ!!」

「なぁに言ってんだお前は、親父も何か言ってやれよ」


物書き机に向かっている父エイトが振り返る


「良いんじゃないのか?ハックは体付きもしっかりしているし

朝方に我流で剣の稽古をこっそりしている事は知っている、冒険者になれると思うぞ?」

「良いのかよ、親父!!危ない仕事じゃないのか!?」

「確かに危ないが・・・うーん、そうだな・・・」


エイトは何か書面をつらつらと書き進めて封筒に入れた


「お前はまだまだ経験不足だし、もっと経験を積むと良いだろう

魔法使いをやっているお父さんの友人が都でやっているギルドで研修を積むと良い

彼は胡散臭い見た目だが信頼出来る男だ、これ紹介状だ」

「親父・・・」


ハックは自分の父親が自分の努力を見ていて尚且つ背中を押している事に感極まった


「ありがとう・・・」

「但し、一つ約束だ、仕事が合わないと思ったり向いていないと思ったら辞めて戻って来い

お前の人生は始まったばかりなんだ、無理や無茶をしてはいけない」

「親父・・・本当にありがとう・・・」


ハックは父の言葉に感謝した

親が自分の夢を応援して、更に自らの身を案じる、これ以上心強い事は無い

画して冒険者ハックは実家から山を二つ超えた都に旅立った

近所のじっちゃんの馬車で揺られて五時間程、朝方出発したので昼過ぎ位である


「おーいハック坊、ついたぞぉ」

「ありがとうじっちゃん!!」


ハックは意気揚々と都に降り立った


「相変わらず凄い活気だな、ここは」


祭り等で父に連れて来られた経験が有る、迷子になって泣いた事も有ったなと想起する


「・・・おっと、そろそろギルドに向かって登録しないと」


意気揚々と夢に向かって足を進めるハック

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