第78話 報告

 帰ってきたぞアドラム。

 だいぶ留守にした気がする。

 町に戻り最初にした事は侯爵への報告だ。

 侯爵には王都の貴族派が大分、俺の事を脅威に感じていると聞かされた。

 開戦派と和平派の争いは和平派が勝利を収めたみたいだ。

 お前はどっちだと聞かれた。

 当然、和平派だと胸を張って答える。

 戦争は嫌いだな。

 無い方が良いに決まっている。

 そして、侯爵は情報が早い。

 早馬で馬車を追い抜いたのだろう。




 次は教会だな。


「こんにちは教会長。今日はSランク昇格の報告に」

「おめでとうございます。でも気をつけて下さい。貴族派の神官が情報収集に乗り出しています」

「原因は分かります。注意する事にします」

「噂でこの町に魔道具を作れる人がいると囁かれてます。それと作ったのはあなたでしょう」


 闇ギルドに一度ばれているからな。どこからか漏れても不思議はない。

 相変わらず教会長はするどいな。


「そうです。魔道具を作りました」




「やはりですか。お金が絡むと人は変わります。そういう人を幾人も見てきました。用心したほうがいい」


 傭兵ギルドの警護はこれからも継続して頼むとするか。


「分かりました。それとフィオレラと婚約しました。もっと早く来るべきだったのですが、ごたごたして遅くなりました。すいません」


 教会長の目尻に涙が浮かぶ。


「それはめでたいですね」

「ありがとうございます。ではこれで」




 さて、薬草事業はどうなっているかな。


「レシールさん、今どうなってますか?」

「薬草の出荷は何回か出来で、一部の薬草は種ば取るった。それど枯れだ薬草も幾つかある」


 ああ、野草は庭になんか植えると枯れるのが結構あると日本に居た時、聞いた。

 難しい種類は当分やめた方が無難だな。

 枯れた薬草の種類のリストを貰って、それは今後止めるように指示をだす。




「ポーションの方は?」

「下級しか作らいねばって、順調だ。薬師ギルドに行ったらガスポーションば催促さいだ」

「そうだな、一段落したので生産、頑張るか。じゃあ、後はよろしく」




 何を作ろうか。

 そうだ、サングラス作ろう。

 サングラスは結構、前に作ろうと思ったけど、目立ちそうなので止めていた。

 もう、目立っても問題は無い。

 フィオレラを呼び魔石のカスでサングラスを作って貰う。

 丁度良い染料を見つけるのに苦労したが、立派なサングラスが出来上がった。




 ガスポーションの製作に入る。

 魔力を集めるのにオークの領域を半日、駆け回るはめになった。

 フィオレラと手分けして三十個作る。

 これだけ作れば充分だろう。




 荷車一杯に瓶を載せて町を行く。

 ハンターにSランクも大変だなと声を掛けられる。

 借金がなければ、こんな苦労もいらないのに。

 納品に行ったら、受付嬢が凄い剣幕だ。


「とにかく、治療院が一杯です! 評判を聞いて赤痰病の患者が押しかけています! どうにかして下さい!」


 そんなこと言われても。これ儲かるけど、下請けに出せないんだよ。

 ローレッタの分析が失われたのが悔やまれる。

 ゴーレム作成のアビリティが使えるのに魔力ゴーレムが作れないなんて。




「ところで赤痰病って何ですか?」

「肺病の一種で病気万能薬でしか治せません」


 ああ、結核みたいな病気か。

 うわ、ハンターやっている場合じゃないかも。


「分かりました。なるべく毎日来ます」




 商業ギルドに寄る。

 口座の残高が借金の三割を超えていた。

 間引き頑張ったから、結構たまっている。

 よし、後は残り三割だ。




「クリフォードさん、今日はこれを持ってきました」


 今日出来たサングラスを見せびらかす。


「えっと何に使う道具なのですか」

「強い日差しから目を守る為に使います」

「ほう、それはいいですね。雪の降る地方などでは重宝しそうです」




「そうですか。でも、これ真似されますよね」

「そうですね。ただ大量発注は出来るでしょうから、権利料は五パーセントでしょうか」

「それでお願いします」




「ところでこれの素材は何ですか? 水筒と一緒ですよね」

「ああ、それは魔石のカスです。精錬スキルを掛けました」

「なるほど、残った魔石はどうされてます」

「特殊な魔道具を作ってます」




「なら今後、魔道具は精錬を掛けた状態で作りましょう」

「ええ、その方が持ち運びに便利ですよね」

「その通りです。それとサングラスを作った時、出た魔石を魔道具にすれば、手間が省けます」

「では次回からその様にします。また来ます」




 今日は準男爵になったお祝いで店を借り切って身内でパーティをしよう。


「えー、Sランクと準男爵になったという事で乾杯!」

「「「「乾杯」」」」。




 フィオレラが真っ先に俺の所に来る。


「改めて、Sランク昇格と準男爵の叙爵おめでとうございます」

「ああ、ありがとう。それと、今後は生産に力を入れて、必要がなければハンターはしない」




 盛大に食っているローレッタは何か不満げだ。


「村どの往復には飽いだ。何か効率のい仕事こねだが?」

「筋力強化のスキルが使えるのなら建築ギルドはどう」


 フィオレラがアイデアを出した。


「それがさんだ」


 それなら、ゴーレムが使えれば仕事の幅が広がるな。

 アビリティは切り札だけど見せるだけなら良いか。


「アビリティを解禁しよう。建築ギルドで仕事を受けて良いぞ。ゴーレムを活用しろ。アビリティの事を聞かれたら、秘術だと言っとけ」

「クレイグさんど一緒に仕事こ出来るのはだ」




 ビオンダさんは意外に食べ方が上品だ。

 聖騎士ともなると色々な所に呼ばれたりするだろう。マナーとかうるさいのかな。


「しかし、驚いたな本当にSランクになるとは。貴君は凄いな。尊敬は出来ないが」

「どうせ変態ですよ」

「シロクさん変態でない男なんていません」


 変態認定は婚約者になっても健在らしい。


「ところで、私はハンターの仕事を気に入っていたので非常に残念だ」

「まあ、そちらは腕が鈍っても困るのでボチボチとやります」




 レシールさんはローレッタに比べると小食だな。

 でも飲む方は行ける口だ。


「そろそろ中級ポーションが作りての」

「薬師ギルドの伝手はできたから、今なら弟子入り出来るかもな。聞いてみるよ」


 まあ、そんなこんなで帰還しての一日が終わる。

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