第52話 中折式銃

 ローレッタ用の銃の設計に入るが本人の希望を聞かないと。

 ローレッタは副業のゴリゴリをやっている。


「ローレッタ、銃身の保護の目算はできた。どういう銃が良い」

「アビリティがとにかく使えるようにしてけ」

「ところで見えない銃弾にアビリティは掛けられるのか?」

「駄目と思う矢で試してみる」


 矢筒の中にある矢尻にアビリティを掛けている様だ。


「駄目の。見えね所は掛からね」

「一度掛けたアビリティを見えない所に入れても効果は持続するのか?」

「やってみる。大丈夫だ」

「なら単発だ。それで手で装填するなら、中折式だ」


 銃に詳しい友人に聞いた薀蓄うんちくにあった知識だ。

 散弾銃に使われている方式で銃身の根元から折れて弾薬を入れるようになっている。


「構想は大体できたから、期待しないで待っていてくれ」




 今度はフィオレラを呼んで封印の説明をする。


「と言う訳で封印の説明は終わったけど、これとっても使えるスキルだと思う。たぶん魔獣の魔術も封印できるし、対人戦に使えば無敵だと思う」


 封印の外から銃弾を打ち込むのは非常に有効だと思う。

 フィオレラなら効果範囲がとんでもなく広いんだろうな。

 部品を変形で作ってもらう為図面を起こす。

 微調整はゴーレム作成の時どうとでもなるから心配はない。

 ゴーレム作成はチートだな。

 微妙だなんて思っていたけど、いい物を貰った。

 魔道具部分の設計もしないと。




 そんなこんなで三日が過ぎ中折式銃が完成した。


「ローレッタ、完成した。だが、銃身の保護の魔道具が範囲の設定が上手くいかなくて。レーザーサイトが付けれない」

「あの光がではる奴なら要らね」

「それなら一応完成だ。試射しないとな」

「やってみてだ」

「試射は杭に固定して離れた位置から魔力のひもで思念を伝える。だから、ローレッタの魔力量では無理だ」

「大人しぐ待つ」




 色々試験して遠征に行くのが二日遅れたが、銃は完成した。


「銃は完成した。明日は準備して明後日遠征するぞ」


 フィオレラがやった場合の封印の範囲を確かめておかないといけないな。

 驚きの結果が出たなんと百メートル位ある。

 フィオレラを前面に出して後ろから銃を撃つのはちょっと抵抗がある。

 どうしようも無い時に使おう。切り札だ。




 準備は済み。遠征に出かける。


「よし出発するぞ。今回は途中オークの領域でローレッタの銃の試験をする」


 ローレッタの装備は通常弓が無くなり強弓と銃になった。

 オークの領域に入りワイバーンの領域を目指しながら魔獣を探す。

 最初の魔獣はウインドウルフだった。

 いつも通りトーチカと鉄条網を出してもらう。


「ローレッタ援護は必要か。どうだ」

「やれるところまでやってみる」

「そうか危なくなったら、援護する」


 ローレッタは一回深呼吸して。

 カシャ、カチッ、バンと音をさせてトーチカの窓から、銃を撃つ。

 一匹仕留めた。


 ローレッタは満足そうに微笑んだ。

 ウインドウルフは反撃に風の刃を撃ってきた。

 トーチカの窓を変形するようフィオレラに指示を出す。

 狭くなった窓から銃身を突き出しローレッタは銃を撃つ。

 また一匹仕留めた。


 得意顔で次の獲物を探し始める。

 ウインドウルフは逃げるか襲い掛かるか迷っているみたいだ。

 意を決してジャンプしてきた一匹を仕留める。

 続いて滑らかな動きでリズム良く銃を撃つ。

 器用だな装填して射撃の動作を淀みない。


 ウインドウルフは逃げ惑っている。

 更に二匹ほど仕留めたところでウインドウルフは引き上げて行った

 問題なさそうだ。

 俺とは雲泥の差がある。




「銃はどうだ使えそう?」

「弓ほど連射は効がんが。弾が早ぇはんで避けられたりさねのがだの」

「アビリティは使ってみた?」

「まだですね。アビリティば使うと連続して撃たいねだはんで」

「次の魔獣で試せたらいいな」




 次の魔獣を探す。この重たい足音はオークだな。

 オークは棍棒を持って近づいてくる。


「よしローレッタやってみろ」

「はい貫通ば試してみる」


 ローレッタは弾丸を一つ取るとアビリティを発動させ流れるような動作で弾を込め銃を撃つ。

 弾はオークの額を打ち抜き致命傷を与えた。


「ローレッタ凄いじゃないか。一発だぞ」

「的がでけと当り易しだ」


 射撃の才能ね。

 俺に無いのはサバイバルゲームで分かっている。

 BB弾が当たった事などほとんど無い。

 だが俺には魔力ゴーレムがある。

 それにローレッタは魔力が少ない。

 適材適所だ。

 凡人には際立った才能など無いのは分かっている。

 と言っても命の危険が身近にある異世界ではそんな事も言ってられない。

 とにかくなんでもがむしゃらにやっていこう。

 気を取り直すしていくとするか。


「次に行こうか」

「はい」




 魔獣を探す。ソードタイガーが木の間にチラチラと見える。


「ローレッタ、素早い奴だいける?」

「こった時の必殺技がある」


 準備は良いようなので念動で石を投げて挑発した。

 ソードタイガーはこちらに気づき飛び跳ねるように走ってくる。

 ローレッタは銃弾を一つ取りアビリティを掛ける。

 銃弾を入れると構えたと同時に撃ち出す。

 弾は後ろ足を掠めて土煙を上げる。

 惜しい外れたかと思った時、後ろ足から血しぶきが上がる。

 当ったのか。

 仕留めたら、聞いてみよう。

 ソードタイガーの動きは鈍くなり貫通のアビリティが掛かったらしい弾で仕留められた。




「後ろ足に当てたのどうやったんだ」

「風魔法のアビリティばおべだ」

「そうか銃弾に風の刃を付けたのか」

「はいその通りだ」

「もう銃の試験は要らない。適当な場所で野営しよう」


 うん、一歩づつだけど、前に進んでいる。

 後はパーティメンバー増加の件なんとかしたい。

 こうして、中折銃の試験の日は大成功で終わった。

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