第45話 分析

 朝食も済み魔道具作りの時間になった。


「フィオレラ、遠征に必要な魔道具は出来た?」

「魔石銃なら出来てます」

「追加でほしいのは紙に書いた次の遠征までに用意してくれ」


 紙を見て頭の中で計算している感じのフィオレラ。


「ずいぶん有りますね魔石が足りないです」

「用意しておく。ところで、アクセサリー作るとか言ってたけど、宝石のカットとか分かるのか?」

「なんですそれ」


 驚愕しているようだ。この世界には無い技術なのか。


「ダイヤモンドとか切った感じで加工すると上手くやると反射や屈折で光が綺麗なんだ」

「そんな方法が丸く磨くしか知りませんでした。店も幾つか回ったけど、そんな商品はありませんでした」

「絶対試すなよ」

「うっ試したい。でも、嫌われたくない」

「駄目だから。ふりじゃないぞ」

「分かりました約束します」


「そうだ魔力が沢山ある職人は少ないのだよな。宝石で花を作ったらどうだ。変形ならできるだろう」

「できると思います。いいですねそれ」

「丸い宝石の中に花の形の空洞なんてのもどうだ」

「魔力沢山使いそうですね」

「できるのなら作ったら、それとかわいい動物なんてのもいいかもな」

「それもいいです」


「男向けには勇ましい魔獣何かがいいかも」

「男物は作る予定が無かったけど、作って見ます」

「失敗してもいいから。いろいろ挑戦してみろ」




 さて、新しい魔道具の構想を練るか。

 サバイバルゲームは年に数回ほど誘われてやっていた。

 射撃は下手くそだったが、友達から携帯兵器の話なんか聞いたからイメージはある。

 思いついたのはスティンガーミサイルとロケットランチャー。


 どちらも出来そう。

 しかし、スキルの同時発動は魔道具でも出来ない。

 推進のスキルとその他のスキルを使うのが難しかった。

 解決策として魔石を二つ以上使えば良いか。

 でも、使い捨ての魔道具に高価な魔石を幾つも使うのは採算が合わない。

 ワイバーンなど大物に使えばいいけど、現在では保留だ。




 スキルも何か良いのがないかな。

 そういえば分析をちょくちょくしているけど、分析はアビリティじゃないのか。

 考えてみるとしよう。

 フィオレラとローレッタは自分の魔力しか認識できない何でだ。

 稀人の能力だと思ったけど、本当にそうか。

 魔力はイメージで色々な動きをする。

 ようはイメージの問題なんじゃないか。


 魔力はなんだエネルギーだろう。

 しかし、この世界の人は血と同じで体に有るうちは認識できないと思っているんじゃないだろうか。

 フィオレラとローレッタは自分の心臓の血流はドキドキした時認識できる事はあっても他人の胸の鼓動は分からないみたいに思っているからか。

 もしかして、分析すると吐き気がするのは俺が魔力を異物だと思ったからか。

 異物イコール弱い毒みたいな。


 魔力はエネルギーだ。

 体温みたいな物、体温みたいな物、体温みたいな物、体温みたいな物……よし思い込んだぞ。

 フィオレラを分析してみる。

 おおっ吐き気が来ない。

 やった分析が進化した。

 戦力にはならないが、微妙に嬉しい。

 分析はアビリティだ。

 フィオレラに教えるとするか。




「フィオレラ、魔力を見るときに魔力は光みたいな物だと思うんだ。他人の中にも光が有って離れていても分かるとイメージしてくれ」

「師匠の魔力が分かります。驚きました」


 やっぱり分析はアビリティだったか。

 魔力はイメージでどうにでもなる恐ろしい物を感じる。

 禁忌を踏んでいそうな気がする。

 まあ神罰食らったら、その時考えよう。


「魔力を消す結界を教えるぞ」

「はい頑張ってスキルにします」

「魔力を全身に纏ってイメージは魔力を眠りつかせるだ。活動している魔力に大人しい魔力をぶつける感じかな」

「やってみます。どうです?」

「分析した感じでは出来てるな。杖ゴーレム持ってきて軽く水魔術当ててみよう」


 杖ゴーレムを部屋から持ってきて水魔術をゆっくり当てる。

 結界に触れた所から水が消えていく。


「成功だな」




「フィオレラ、商業ギルドに行こう」

「はい、一緒に行きましょう。デートです」

「仕事だろ。まあ、いいか」




 嬉しそうなフィオレラと連れだって商業ギルドに行く。

 クリフォードさんを呼んでもらう。


「こんにちは、今日は納品と相談に乗ってもらいたくて来ました」

「はじめまして、フィオレラといいます」

「はじめまして、クリフォードです。シロクさんが人を連れてくるなんて初めてですな。恋人ですか?」

「恋人だなんて」


 良い様におだてられてまんざらでもない機嫌のフィオレラ。

 これでは商人は無理だな。感情が出すぎる。


「弟子ですよ」

「そういう事にしておきます」


「まずは納品します」


 魔道具をクリフォードさんが目で追う。わずかな視線だが商人らしくない。

 水筒には目もくれないところをみると魔道具が欲しくてたまらないのだろう。


「魔道具の売れ行きは良いですな。劇場用照明は売れましたが数は出ない感触です。おおっ今回は新しいのがあります。放出の魔道具ですか?」

「試したところウィンドウルフなら逃げて行きました」

「そうですか。商人に売れそうですな……」


 クリフォードさんは考えこんで計算している感じだ。


「音楽の魔道具は考えているのですが、音を記憶するところがどうも上手くいかないと言ってました」

「気長にお待ちしております」




「それで相談なんですが、フィオレラが趣味と副業を兼ねましてアクセサリーを売りたいのでその相談に」

「商業ギルドに加入したいと思います。それからこれがサンプルです」


 フィオレラは銀の指輪を出す。

 指輪は中央に銀で作られた薔薇の花が付いている。


「これはなかなか凝った細工ですな」

「どうですか。売り物になりそうです?」


 フィオレラが不安そうに聞く。


「問題なく売り物になります」

「私に宝石店を紹介して下さい」

「ええ、良いでしょう。紹介状を書きます」

「良かったなフィオレラ。クリフォードさん、ありがとうございます」




 窓口でフィオレラがギルドに登録する。

 その間に俺は必要な物を仕入れた。


「フィオレラはこれからどうする」

「材料も買ったし、雑務ギルドで裁縫の依頼を出して家に帰ります」




 俺はどうするか。

 魔力を消す結界のスキルを調べるか。


「俺はハンターギルドに行く」

「そうですか。ここでお別れですね」


 微妙にさびしそうだ。

 一緒に雑務ギルドに行くか。

 でもあんまり甘やかすのもな。


「それじゃ行ってくる」


 フィオレラと別れハンターギルドの資料室に行き、スキルの本を読み結界のスキルを探す。

 あった、多分これだ魔力障壁だ。

 今はスキルを持っている人は居ないだろうと書いてある。

 幻のスキルみたいだ。

 秘密が増えたな。

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