ゴーレム使いの成り上がり

第３５話 攻撃用魔道具

　うーん、ちょっと考えてみた。今必要なのは何だろうと。

　俺の課題は銃ゴーレムの命中率は練習で克服するしか無いと思う。

　待てよ遠目とゴーレム操作が同時にやれれば解決だ。

　同時発動は練習すればできるのか。

　やってみるしかないか。

　フィオレラの課題は攻撃には直接参加できない事だ。

　攻撃魔道具を作って魔力を供給すれば攻撃しているのと変わらない。

　魔道具を作り運用して良いか後で聞いてみよう。

　ローレッタの課題は魔力の少なさとアビリティを覚えて手札を増やす事だ。

　よし方針は大体決まったぞ。

　二人をリビングに集める。

「フィオレラ魔道具の事だけど、攻撃用の魔道具を作るのは嫌か？」

「私は例えば鍛冶師が打った剣が人殺しに使われても、作った人の責任は殆どないと思います」

　納得はしてるみたい。

　しかし、戸惑いの色も見える。

「攻撃用の魔道具は絶対売らない。このパーティのみで使う約束する」

　人殺しの武器を売ってまで、成り上がるつもりは無い。

　変なこだわりだと思う。

　へたれの俺は責任を持てない事はしたくない。

　魔道具の技術を発明しておいて今更だ。

　魔道具はスキルの活用の一種だと思う。

　他人が勝手に攻撃魔道具を作って事件を起こしても、そこまで責任持たなくても良いと考えている。

「分かりました。攻撃用魔道具を作りましょう」

「とりあえず火魔法の魔道具が良いから、スキルの訓練で火魔法を覚えて欲しい」

「次はローレッタだ。手札を増やすのはアビリティを覚えるのが一番だと思う。どんな物が良い」

「攻撃力が上がる物ど。命中率が上がる物が良（い）だ」

「攻撃力は魔法になるからアビリティだと更に魔力を食うがどうする」

「矢尻に纏わへる感じで撃つ一瞬ばし使いてだ」

「それだと雷魔法と火魔法辺りか」

「それで良（い）だ。両方覚えます」

「命中率は遠目があるから、誘導する事で命中率を上げるのはどうか」

「良（い）だの」

「それだと思い付くのは念動だ」

「それでやってみる」

　念動で命中率上がるのか疑問だな。

　ローレッタの魔力だと効果範囲が狭すぎて無駄に終わりそう。

　それでも何事にもチャレンジだ。

　やってみなくちゃ始まらない。

「ローレッタの魔力の少なさをカバーできるのは攻撃用魔道具しか無いと思っている。それで運用してみてくれ」

「魔道具ができだら試してみる」

「そうか夕飯前のスキル訓練で教えるから、今日の副業の薬作りは二回にしてくれ。これで打ち合わせは終わりだ」

　ローレッタが薬作りを始め、フィオレラは銀の水筒を作り始める。

　俺は攻撃用魔道具の構想を練った。

　まず魔石の大きさだ。

　フィオレラの魔力を全開で込めるとしたら、金貨三枚ぐらいの魔石だ。

　大きさは七センチぐらいだから、アクセサリーにするのは無理くさい。

　ガワはいっその事、拳銃みたいにするか。

　たぶん信号弾撃つ拳銃みたいになる。

　引き金の所で魔石に触れる様にして発射させるか。

　それだと二丁拳銃が良い。

　炎の矢を撃つ奴と炎の槍を撃つのを使い分けるか。

　そう言えば魔石の充填は握り込むのだった。

　握れない魔石はどうやって充填するんだ。

　フィオレラなら知ってるかな。

　聞いてみよう。

「フィオレラ作業中に申し訳ない。握れない魔石に魔力を入れる方法なんてあるのか？」

「ええあります。割と有名なスキルの魔力放出を使います。そうでないとドラゴンの魔石は大きいので充填できません」

「どんなスキルなんだ」

「ただ魔力を放出するだけです。簡単にアビリティを習得できると思います」

「それってフィオレラに最初のスキル覚えさせる時やったな」

「なつかしいですね。それで合ってます」

「なんでそんなスキルが有名なんだ」

「魔導金属で作った武器、魔導武器ですが炎を出したりする為には魔力放出のスキルが必要です」

「武術家垂涎のスキルか」

「それと、全身から魔力放出を行うと。魔獣が逃げて行くそうです」

「それ魔道具にしたら、売れないか。フィオレラ是非覚えてくれ」

「はい、魔力放出のスキルも覚えます」

　これで、攻撃用魔道具は大体固まった。

　ふと思う。

　有名なスキルが有るのなら、全然知られていないスキルとかは誰も使い方が分からない状態にならないか。

　回路開発と回路魔法はフィオレラしか使い方を知らない。

　何も残さなくて良いのか。

「フィオレラ回路開発と回路魔法の事だけど、後世に使い方を残す為に本とか書かなくて良い？」

「それなら問題ないです。新スキルが出来たての頃はスキルが発現した人大勢に神様が知識を授けるそうです」

　忘れさられたスキルも知識を授けているのかも。

　俺が心配する様な問題でもないしな。

　魔道具の設計とかの知識はハンターを辞めたら、本でも書くか。

　それと回路開発は複雑すぎてアビリティで再現出来ない。

　次代の人はどうやって取得するのかな。

　神に祈るのか、聞いてみよう。

「なぁ、神に祈ったら、取得できるスキルとかある？」

「有名なのですと神託スキルは神に祈ると獲得できるらしいですよ。計算と記録もそうです。他にも同様なのはあるはずだけど、覚えてません。それと簡単には獲得できないと聞いてます」

「そうか在るのか。なら仕方ない。そういう仕様なんだな」

　拳銃のデザインを紙に描いていたら、時間になったので昼飯を食べ商業ギルドに向かう。

　久しぶりに口座のチェックをしたら、借金は全て返せる金額になっていた。

　借金を返して少し考えた。

　銃ゴーレムが通用しない敵がそのうち現れるのだろう。

　先手先手だ。

　よし銃ゴーレムのバージョンアップの準備をしよう。

　熱に強くて硬くて丈夫な魔導金属オリハルコンを仕入れよう。

　酒場で噂話を聞いた時Ａランクハンターがオリハルコンの剣の材料がなかなか手に入らなくて何ヶ月も待たされたと言っていた。

　今から準備しても遅いくらいだ。

　いままでの権利料を全て担保に入れて借金してオリハルコンのインゴット四本を予約する。

　その額ミスリル貨十二枚。

　日本円換算で三億六千万。

　急に怖くなってきた。

　男は度胸だ。

　もう予約したんだ。

　何時も通りにクリフォードさんを呼び出す。

「こんにちは、納品に来ました」

　色々な魔道具と水筒をテーブルに並べる。

　何も言わないクリフォードさんを見た。

　まだ、魔道具の作り方は他にばれてないと考える。

「シロクさん思い切りましたね。オリハルコンの事、聞きましたよ」

「Ｓランクは人生の目標みたいな物だから努力は惜しみません」

「そうですか大きな目標があるのは良い事です」

「ところでレシピの方はどんな感じです？」

「大金貨一枚程の印税になってます。詳しく知りたければ受付で明細が見れます」

　銀貨五枚で売ると言っていた。

　三割印税をもらえるということは七百冊近く売れたのか。

　本は勝手に写本されるから今後はこんなに売れないだろう。

　そうだローレッタにお金払わないと。

　帰る事をクリフォードに告げ、本の印税を受付で受け取る。

「ローレッタ、レシピの印税が入った」

　渡された大金貨一枚と大銀貨数枚を見る。

　そして、あわあわと声にならない感じ。

　手足をパタパタさせ、はしゃぎっぷりは子供みたいだった

「こ、こ、こったにもらって」

「故郷の兄弟になにか買ってやるんだな」