トキメキ★平成浪漫
オブリガート
第1話 “ト”
高校の修学旅行で訪れた北海道。
「うわぁ!すごい!綺麗!」
広大な大地と美しい自然に感動し、興奮し、写真を撮り合うクラスメイト達。
花畑ではしゃぎ回るその姿は眩しいほど生き生きとしていて、幸せそうで、まさにリア充って感じ。
私はそんな彼らを、少し離れた場所から冷めた目で見ている。
―――何がそんなに楽しいんだろう。
綺麗な池も、色とりどりの花畑も、百万ドルの夜景も、私の目にはまるで白黒写真のようにしか映らない。
「わ!このソフトクリーム、めちゃくちゃ美味しい!やっぱり北海道の食べ物は違うよね!」
変な色のソフトクリームを食べながら、グルメ番組の食リポよろしく、大袈裟なほど大きな唸り声を上げている。
「ねぇ、リサぁ」
冴えない友人ユイカが背中をぐいと小突いてきた。
「私達もソフトクリーム食べようよ。ここでしか買えないラベンダー味のソフトクリームなんだって!」
―――――ラベンダー味?絶対美味しくないでしょ。だいたいラベンダーって食べ物じゃないし。花だし。
「私はいらない」
ユイカの誘いをそっけなく断り、私はスマホを取り出してソーシャルゲームをやり始めた。
昨年からはまっている恋愛シミュレーションゲーム、所謂“乙女ゲーム”というやつで、そのゲームタイトルは『トキメキ★平安浪漫』。
平安時代を舞台に数々のイケメン貴族達と逢瀬を重ね、少女漫画のような刺激的な恋愛を楽しむことができるアドベンチャーゲームだ。
現実よりも、このゲームの世界にいる方がよっぽど楽しい。
煩わしい人間関係には悩まされずに済むし、口うるさい先生や親はいないし、なによりイケメン達がちやほやしてくれる――――私にとって最高の居場所、心のオアシスだ。
ちなみに私の押しキャラは
「チッ…また
無料ガチャでいらないアイテムを引き当て、思わず不満が声に出る。
どうせなら回復アイテムがよかったな。
マイページに行くと、新着のお知らせが一件入っていた。
運営からのメッセージだった。
件名には、『三周年特別ガチャチケットプレゼント』と書かれている。
本文を開き、内容にサッと目を走らせた。
『いつもご利用ありがとうございます。おかげさまでトキメキ★平安浪漫は三周年を迎えることができました!日頃の感謝を込めまして、“三周年記念ガチャ”を開催致します!ユーザーの皆様にはガチャチケットを一枚ずつ進呈致しますので、プレゼントボックスよりお受け取りください』
私はすぐさまプレゼントボックスからガチャチケットをゲットし、三周年記念ガチャを回した。
無料で引けるガチャだし、どうせ大したアイテムは出てこないだろうと、ろくに期待もせずに引いたのだが―――――
『おめでとうございます!出現率0.0000001%の超激レアアイテム“リアル乙ゲー体験コースチケット”に当選しました!チケットを今すぐご利用の場合は下記の“チケットを使う”ボタンをクリックしてください』
―――――は…?
私はしばし呆然としたまま画面を見つめていた。
“リアル乙ゲー体験コース”?何これ?現実でイケメンパラダイスを体験できるってこと?
――――まさか…。
そんな夢みたいな話、あるわけない。
きっとVR対応のゲームソフトか何かだろう。
取り合えず“チケットを使う”ボタンを押してみる。
VRの恋愛シミュレーションゲームか…。
臨場感があって今よりももっと楽しめそう。
ニヤニヤしながらページが切り替わるのを待っていると、ふいに画面が真っ白になり、カッと目映い光を放った。
「え?ちょっ…何これ?」
光はどんどん輝きを増し、私を包み込んでいく。
訳がわからないまま、私は光に飲み込みれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます