41 マケラと共に
ドゥルーダ邸を出た俺は、ノバラシ河の定期便ではなく、領主ドルテが手配してくれた馬車に乗り込み、トンビ村へと急いだ。領主ドルテと番兵長リューカは、ダマスの街とその近辺での捜索を約束してくれた。もしシンを発見したり、少しでも手掛かりになることがあれば、すぐに伝令を出して知らせてくれるという。
馬車は定期便で行くよりもずっと速くトンビ村に到着した。俺は着いたその足でマケラの屋敷に行き、マケラに現在の状況の報告をした。
「ザウロスが、プッピと瓜二つの人間を操っているというのか」マケラは俺の報告を聞いて、驚いていた。
「どうやら、そのようです。ザウロスの護符は持ち去られてしまいました」俺は言った。
そして、ドゥルーダの見立てではダイケイブの奥深くに、ザウロスの杖がまだ残されている可能性があることを伝えた。
「杖がまだダイケイブに……。よし、私が行こう。私が杖を探してくる」マケラが言ったが、俺はマケラを止めた。
「いえ、だめです。マケラ様はトンビ村を離れてはいけません。今回も私が行ってきます」俺は言った。
「いや、私も行く。こう見えても剣の腕はたつのだ。そして、ザウロスの杖がもしダイケイブ内に残っているのなら、この私が、この手で燃やしてやりたいのだ」
マケラの決意は固いようだった。仕方がない。マケラも連れて行くとしよう。どのみち、俺には魔除けアプリがある。恐らく、ほとんど魔物と遭遇せずに行って帰って来れるのではないだろうか。それに、マケラは俺と同じく以前にダイケイブの地図を見ていて、ダイケイブ内を熟知している。今回は俺とマケラで行くのが妥当かもしれない。
「もう一人、連れて行こうと思っている仲間がいます」
俺は、タータを同行させたい旨をマケラに伝えた。ダイケイブ内のどこに杖が落ちているのか、わからないのだ。タータの探し物の術がなければ、とても目的は達成できない。
「タリアの妹か……。タリアがなんと言うだろう」マケラが心配そうに言った。
「そうです。そこです。タータ本人は行きたがるに決まってます。あとは、タリアを説得するしかありません。探し物の術を使えて、ダンジョンに入ることを是とする魔法使いは、トンビ村にはタータしかいないのですから」ベアリクは拒否するに違いないし、サチメラも、クルプも同じだ。タータしかいないのだ。
翌日、俺はタリアの店に出勤した。
そして、事情を話した。近々、ダイケイブに再び潜入する必要があることを説明した。
「またダイケイブに行くの?! ……私は行ってほしくないなぁ。心配だもの」タリアは言った。
「でも、行くしかないんだ。ドゥルーダの見立てで、ザウロスの杖はまだダイケイブ内に残されているらしいことがわかったんだ。ザウロスが杖を取り返す前に、俺達が杖を回収して、今度こそ燃やしてしまわないと」
「あなたって、ほんとに懲りない人ね。私は反対よ。あなたに危ない目に遭ってほしくないのよ。だいたいね、あなた最近、いろんな所に出かけてばかりで、全然店の仕事に入ってくれてないじゃない。これじゃあ給料泥棒よ」
「仕事を手伝えないのは本当に悪いと思っているよ。でも、これが最後だ。行かせてくれよ。それに、今回はマケラ様も一緒に行くんだ」
「マケラ様も!? ……仕方ないわね。ねぇ、本当に気を付けて行ってきてよ? 無事に帰ってこないと承知しないわよ」
「ああ、わかってるよ。必ず無事で帰ってくる。……それと、もう一つお願いがあるんだが」
「何よ」
「今回のダイケイブ行きなんだが、タータを連れて行きたいんだ」
「は? だめよ! 何言ってるの? こないだ一緒にバクタまで行ったからって、今度ばかりは許さないわよ。タータを危ない目に遭わせるのはやめてちょうだい」
「タータの探し物の呪文が頼りなんだ。タータがいないと、杖を探すことができないんだ」
「だめよ、だめだめ。タータはまだ子供なのよ」
タリアは絶対に駄目だと言い張ったが、結局、しつこく頼む俺に根負けして、最後には渋々了承してくれた。俺だけでなく、マケラの頼みでもあることが、決め手だった。
「必ず、タータを無事で帰してね」タリアは俺に念を押した。
その日の夜、タータ本人にダイケイブ行きを打診したところ、彼女は二つ返事で快諾した。
「いよいよ私もダイケイブに行くのね! 素敵! 冒険だわ!」タータは目を輝かせて喜んだ。
そして、今回もラモンにも同行してもらうこととなった。可能性は低いが、もし魔物と遭遇したら、頼りになるのはラモンの早撃ちの弓だ。
こうして、ダイケイブに再度潜入する仲間が決まった。
俺と、マケラ、そしてラモンとタータの四人のパーティだ。
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