火照る南瓜。

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第1話  -解放-

 遥か昔、暗い森の中に魔族の精ディーマニィクが宿り様々な植物を実らせる大樹があった。

実った植物にも、時々に魔族の精ディーマニィクが宿るものがあった。

魔族の精ディーマニィクが宿ったもの中には植物のようにじっとしている者もいれば、己の存在に気づき言葉を発しようとする者や、体を動かし外の世界へ行こうとする者もいた。

 しかし、魔族の精ディーマニィクが宿ったものたちはすぐに何かに察したかのように諦めるのであった。大樹の根本にいつ誰が何のために刻んだのか不明な無数の十字架が刻まれており、魔族の精ディーマニィクが宿ったものたちは十字架を恐れ、十字架を初めて目にした者でさえ何かで縛られたかのように身動きがとれぬまま時が立つのをただひたすら待つだけであった。

 そんな不思議で奇妙な大樹が森の奥深くの暗い闇の中に存在した。



 そんなある時、新たな魔族の精ディーマニィクが宿った者が目を覚した。

 (うぅ~ん…ここは…暗い....森? それにやけに視界が高い気がする…)

ぼやけた視界が晴れてきた。何故か体が動かない。仕方なく出来るだけの視界を動かした。

目の前には、大樹から生える無数の草木や、先々に枝分かれした木の枝の先に果物や野菜、花などどれも大樹から実ものではなかった。この様な異様な光景に唖然としている中、異常なまでに身動きがとれぬことに違和感を抱きはじめた。

 (どうしてここまで体が動かないのか)

時々視界が揺れることはあるがそれは大樹が風で揺れるたびのことであった。

 そんな中ふと木の根元の方に目を向けると、

その瞬間 ―苦しい―

目の前には無数の十字架があり、

恐怖。後悔。悲しみ。怒り。

彼の中で感情の奔流が溢れ出しそうになり、今にも叫びたかった。

とにかくここから動きたい。なのに体が動かない。すぐに視線を逸らしたが恐怖はきえることは無く、

彼はこの苦しみから逃れられる事は無かった。


この呪縛から解かれたい。

そう願いながら彼は、外の世界への望みを忘れずにくる日もくる日も僅かな希望を待ち続けた。

 

 何十年という長い時がたち、ほぼすべての植物たちが外の世界を諦め掛けていた頃、とても強い嵐の夜のことだった。

 月の光に照らされながらもとても強い風に森全体が大きく揺れていた。大樹に実っていた植物も静かに大きく揺れていた。

 そんな時様々な植物を実らせていた大樹のあちこちから「バキバキッ!」っと強風に耐えられなくなった枝が次々と折れていく大きな音がした。枝が折れていくと同時に実っていた様々な植物も下へと落下していった。

大きな揺れと共に呆然としていた彼の意識もすぐに戻った。

 (な、なんだ、この揺れは...)

すると、まるでバランスを取っているかのように大樹全体がぐらりと大きく左右に揺れ、大樹の体支える大きな根が地面をえぐるように姿を現したのを目にした。

 (倒れる.....⁉)

途端に彼を支えていた枝に亀裂が入り、大樹と彼自身を繋いでいた何かがぷつりとちぎれたような気がした。


 彼は風の影響で少し遠くに落ちてい中、強風が大樹の木々を通り抜けけたたましい音が聞こえたときた。

それは大樹が悲しげに叫んでるようにも聞こえたのあった....




           『ゴトッ....』

     何か少し重いものが

     地面に当たる音がした。

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