汝、AIなりや?

「7時になりました。『汝、AIなりやプロジェクト』を開始します。おはようございます。本日の相手をします私は、ギンザクラとお呼びください」

今日は女性を模した機械音声で起こされた。


チューリングテストというものがある。

ざっくりと説明すると、機械を通して会話する相手が、機械なのか人間なのか判定するテストのことだ。

なぜいきなりそんな説明をするかというと、主人公が毎日会話しているのもその一種だからだ。


AIが登場して30年。多種多様なAIの中には人間と変わり無い、いや人間以上に人間らしい返答をする物もあらわれた。

それを面白がったどこかの団体が、社会実験として大々的にチューリングテストを行うことにした。


たくさんの参加者にAIか人間かわからない状態で会話をさせ、最後にAIか人間であるかを聞いてみよう。どれくらいの人が機械と人間を見分けられるのだろうか。

後、昔流行った、自分を含めた集団の中から裏切り者を探すゲームをもじって「汝、AIなりや?」プロジェクトということにしよう。面白そうだから。

参加者は十二時間の間、好きに会話をしてその最後に話をしていた相手がAIか人間かを判定する。ただそれだけ。

報酬も、結果も返って来ない。それでも参加者はそれなりにいる。


こちらから話しかけても良いし、相手が話しかけてくるのを待っても良い。なんなら相手を丸1日無視し続けても良い。

「そちらの天気はいかがですか?」

「あなたの好きなアーティストは誰ですか?」

「サメは好きですか?」

よくある質問から変わった質問まで時間を開けていろいろ聞いてくる。

何回も受けていると相手にも個性があるとわかる。

明らかにAIだとわかるような話し方。

自分語りが多いもの。聞き上手。

ほめてくれるもの。皮肉を言うもの。

突然に会話が切れるもの。


会話を通して主人公が成長する。

見えない相手のことを考えるようになる。それが周りを見ることにつながり、自分について考えるきっかけになる。


変化する感情・考え方・伝え方・聞き方・興味関心。

そして変化に戸惑う主人公が起こす行動。


「19時になりました。『汝、AIなりや?プロジェクト』を終了します。本日の相手はギンザクラでした。最後に質問に答えてください。私はどちらだと思いますか」


      AI   /  人間

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