第5話

T大学工学部電子工学科三年の哲人はこの日も憂鬱な気分だった。


せっかく日本最高峰のT大学に一浪して入学したのに講義が面白くない。


何のために苦労してT大学に入ったのかと思っていた。サークルにも一応入っているけどそこまでガチのサークルでもないから心から楽しめない。



哲人は口を開けてぼーっとしながら講義を聞いていると、



「では、今日の講義はこれで終わります。今日の小課題のレポートは私にメールで送ってください。以上」



浮浪人のような髪形をした初老の教授はそう言った。哲人はふうとため息をつき、席を立ちあがった。



そして暗い顔をしながらとぼとぼと講義室を出ようとした。すると、後ろから同じ学部の学生が駆け寄ってきた。



「おーい、てつとぉ、今度、研究室配属の希望をとるよな。お前どこの研究室にするか決めた?」


「なんだ秀喜か。研究室配属かあ、まだ決めてないな。ていうかどこでもいいや」



秀喜は同じ学部の数少ない友人だ。体育会系の運動部に所属していてはつらつとしている奴だ。秀喜はハハッと笑い、哲人に言った。



「研究室選びは大切だぞぉ。就職にすごく関係あるからな。理系は研究室の推薦で就職が決まることが多いから研究室は慎重に選ばないと」


「そうだな」



哲人はフンといった感じで答えた。


こいつなら推薦なんかなくても一流企業にすんなり決まるんじゃないかと哲人は内心思った。



「研究室の情報を部活の先輩からいろいろ聞いているから今度一緒に決めようぜ」


「それはつまり飲みながらってことか?」


「分かっているじゃないの。明日夜時間あるか?」



哲人はもう分かったからという感じで明日の約束をした。



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