夢の名前 

水玉猫

昨日

鸚鵡

 遠い夏の日の朝、私は、おばあさまの大切な鸚鵡おうむを、開け放した窓から逃がした。


 子どもだった私は、自由になった鸚鵡は生まれ故郷の南の国に帰っていくとばかり思っていた。そして、おとぎ話のお姫様のように、恩人の私もいっしょに南の国に連れて行ってくれると信じていた。


 私は生まれたときから、窮屈で退屈な生活を強いられ続けてきた。それは大人になった今も変わらない。

 けれど、子どもだったころは、私だって自由になることができると信じていた。

だから、私は、鸚鵡の恩返しをあてにすることにしたのだ。

 

 鸚鵡は、おばあさまのお誕生日に、南の国の王族から送られたとても美しく貴重な鳥だった。


 きらめく宝石のような鸚鵡は長いリボンをたなびかせ、おぼつかない羽ばたきでどうにか飛んだ。

 窓の外によろよろと飛んでいく鳥を見ながら、私は満足だった。


 でも、私はおとぎ話のお姫様にはなれなかった。

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