ふぁみこん!~Family Complex~
暮影司(ぐれえいじ)
第1話 誰と一緒に寝るんですか!
僕は妹が大好きだ。シスコンと言われても構わない。
義姉も義妹も大好きだ。義兄だって好きだ。父も義母も愛している。家族が愛し合うことに何の問題があるというのだろう。
妹が好きすぎるのがシスコンで、兄が好きならブラコンで、母が好きならマザコンで、父が好きならファザコンだというなら、家族みんなが大好きすぎる僕はさしずめファミリーコンプレックス。……ファミコンとでも呼ばれるのだろうか。
「は~い、それじゃあ兄弟会議をはじめま~す」
夕飯を食べ終え、全員にお茶が用意されると、義理の姉が会議の開催を宣言した。一人だけすでに風呂を済ませているため、薄手の胸元が大きく開いたパジャマ姿だ。ピンクのボーダーがよく似合っていて可愛らしいが、ちょっと見せすぎじゃないのかなと思いつつ、高校一年生にしては立派な谷間から目を逸らしてお茶を飲む。
「議題は次回の家族旅行の部屋割り、でいいのかしら」
肩まで伸びた黒髪を払いながら発言したのが義理の妹の
「だから、お兄ちゃんは私と一緒の部屋でいいじゃないですか。本当の兄妹なんだし」
血の繋がった実の妹である
「その血が繋がってるとか繋がってないとかいう理由は無しにするというルールをもう忘れたのかしら?」
「でも繋がってないと間違いがあるといけませんし?」
「あら、それこそ繋がってる方が間違いがあったらマズいのではないかしら?」
義理の妹と実の妹はなぜか仲が悪い。どっちも可愛い妹なので、仲良くして欲しいのだが。
「ねえ、二人とも、間違いって具体的になぁーに?」
どうやら困っていたのは話の意味がわからなかったからのようだった。人差し指を頬に当てて小首をかしげる。癒し系の柔らかい表情を絶やさない
「そ、それはその、あなたが答えなさいよ」
「ええっ!? それはその、あの、なんというか」
慌てふためく妹たち。こういうときは二人共息が合うと言うか、似た者同士なんだよなあ。なんで仲良く出来ないのかなあ。
「ほら、やっぱりそうなるだろ。つまり俺と一緒なら問題ないじゃないか」
「いえ男同士のほうがマズいです」
「兄さんたちのほうがよっぽど心配」
やはり息の合う妹たちだった。何がマズくて何が心配なのかさっぱりわからないけれど。妹二人相手では反論しかねるのか口を尖らせているだけの
「うーん。やっぱりお姉ちゃんと一緒なのが一番いいと思うのよ」
ぺかーっと朗らかに笑う
「姉さんが一番駄目に決まってるでしょう」
「そうですよお姉さんは駄目です」
「姉貴は駄目だな」
「何が駄目なのよ~。ねえ、ゆうくんは良いよねえ~?」
すがるような目で見られて、僕は胸がキュンとなった。
「もちろん良いです。僕、
「わ~い、ゆうくんありがと~、私も大好き~」
両手を上げて喜んでくれた。嬉しいなあ。可愛いなあ。
「だから駄目なんですよ」
「絶対駄目です」
「姉貴は駄目だな」
3人共が揃って長いため息を付いた。なぜだろう……。
「私は妹ちゃん二人が一緒がいいと思うの。仲良くなって欲しいな~」
そう言って俺にばちんばちんと大げさなウインクで目配せしてくる。露骨すぎて全員気づいているので、目配せの意味がなかった。しかし妹たちに仲良くなって欲しいのは確かだ。
「うん、僕も二人に仲良くして欲しいから、二人で寝たら良いんじゃないかな」
そう言うとなぜか三人に睨まれる。うう、僕はみんな好きなのに、みんなは僕が嫌いなのかな……。悲しい。
「誰のせいだと……」
「全くお兄ちゃんは」
妹たちは口を尖らせていた。僕のほうがよっぽどそういう気持ちだと思うのだけれど。僕はみんな大好きだから誰でもいいのに。
膠着状態に入った僕たちに参戦してきたのは
「じゃあ、じゃあ、ママと一緒に寝るのはどうかしらん?」
そう言って胸の谷間に僕の顔を押し付けた。背も低く童顔できゃぴきゃぴしている
「ちょっと母さん、それヤメてって言ってるでしょう? 勇気さんだって男なのよ?」
「えっ? それって私のこと女として見てくれてるってこと? 嬉しっ」
ますますギュッとしてくる
「うちの兄を籠絡するのはやめてくださいっ」
俺の顔は
「あらら、
「お
だよな。父さんは
「ちょっと、だから、それヤメなさいって言ってるでしょう? なんで母さんがやっていたことをあなたまでするのかしら」
「ああ、自分は出来ないから悔しがっているんですね、オネエちゃんは。年上のくせにおっぱい無いから」
「おっ!? む、胸が多少小さいからなんだというのかしら」
また険悪なムードになってしまった。なんとかしないと……。
「ぼ、僕はそんなになくっても別に」
発言の途中でギロリと睨まれてしまった。フォローしているつもりなのに……。
「あ」
義妹がぽんと手を打った。彼女は普段しっかりした優等生の仮面を被り続けているが、ときおりこういうあどけない表情を見せる。しっかりしていてもやっぱり13歳の女の子なんだなあと微笑ましくなる。
「私は胸がないから勇気さんと一緒に寝ても問題ないんじゃないかしら」
ぴっと人差し指を立ててにこやかにそう言った彼女に、みんな目をつむって天井を向いた。絶句というやつである。
「それ、言っちゃうんだ……」
「ふふふ、勝ったわ。勝てば勝ちなのよ」
義妹は顔を赤くして、なにやらよくわからない勝ち名乗りをあげていた。どのあたりが勝ったのかよくわからない。少なくとも胸の大きさでは負けている。
「今日もなんにも決まらなかったわね~」
「ええっ!? 今私と勇気さんで決まったのでは!?」
「今ので決まったと思ってるのは
ふふ、と笑ってお茶をすする
「ねえ、先にどこに旅行に行くかを決めない?」
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