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「あ、見て!」

 少年がまたうとうとと寝そうになっていると、少女が勢いよく肩を叩いて彼を呼んだ。

「わあ!」

 少年が目を擦りながら少女が指差す方を見ると、星が光の線になって地面へと落ちていた。一つ落ちたと思うと、また別のところで一つ、もう一つと次々に落ちていく。

「ほらね!」

 少女は興奮して空を指差す。少年はただただ目の前の光景に目を奪われて、願いごとなんかはすっかり忘れてしまっていた。

 空から次々に降ってくる流れ星はまるで滝のようで、こんなにもたくさん勢いよく流れているのに辺りは息をするのもはばかられるくらいに静かで、その奇妙な一体感はその場を独特の雰囲気で包み込んでいた。

 そんな素晴らしい時間は一瞬だった。星が流れ終えても、二人は興奮と感動が抑えきれずに呆然と空を眺めていた。

「ありがとう」

 少年はそんな言葉しか出てこなかった。そんな何てことのない言葉の中に、彼の様々な思いがいっぱいに詰め込まれていた。少女に向けて発せられたその言葉は、無意識に色んなところへ向けられた言葉でもあった。

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