また、あの夕日の輝く公園で
蒼谷ゆう
第1話
新潟から東京へ中学校に上がる時に転校してきてそのまま東京で高校に入った。
僕の高校生活は何もかもが順調だ。
そう思えていたのは高2の夏までだ。高2の夏までは彼女もいて部活もやる気はあった。しかし、高2の秋のこと。その彼女に振られた。その日から部活には身が入らず、部活を休みがちになった。
僕は、気が弱い方の人間だ。少しのことで傷ついたり諦めたりしていたので小学生のころからよく怒られた。
彼女とは1年半付き合っていた。これは僕の中で最長だった、だから余計に落ち込んだのだ。
僕は本当に彼女が好きだった。
付き合っている間、他の人には興味もなく、友達と呼べるような人はいなくて学校では孤立していた、だから3年生に上がる時のクラス替えには全く期待していなかった。
そんなある日の帰り道。珍しく綺麗な毛並みの野良猫が歩いている。ふと、目をやると通った記憶のない道に入っていく。
「あんな道あったっけ」
僕は、つい猫について行ってしまった。そこには、開けた道が広がりその先に町が見渡せれる公園があった。
「あっ」
声が出るほど綺麗で真っ赤な夕焼けが公園に降り注いでいた。そこに、1人女の子が立っていた。背が高く綺麗な髪が風に吹かれ夕焼けに照らされた綺麗な横顔が見えた。
「きれいだ。」ふと声が出た。
その次の日の高校3年の始業式の日のことだった。綺麗な桜並木を抜け3年目の通学路を歩く。変わり映えのない校舎に着くと新しい教室の席に着いて一息をつく。
「ねぇ君、目が輝いてないねぇ」
どこからか声がした。
「ねぇー!」
顔を上げると、目が大きく背の小さな黒髪の女の子が立っていた、あの日の公園にいた子に似ている気もする。
その女の子は、こちらを見て笑顔で聞いた。
「名前は?」
僕は戸惑った、こんなにいきなり笑顔で話しかけられ少し食い気味だったのは初めてだった。
「岩崎健です。」
「そっか!たけるくんか!私は高木奈々だよ、奈々って呼んでね!」
「あ、うん」
「ねぇ、たけるくん今日暇?」彼女は運動場を見ながら聞いた。
「ま、まぁ…」何か誘われる予感がした。
「そっか!なら、カラオケ行こうよ!」やっぱり…そういえば少し変わった女の子がいるのは聞いていた。けど、そんな有名な子が新学期早々に話しかけてくるとは。
駅前の商店街の方へ5分ほど歩くと最近できたのか綺麗なカラオケ店がありそこに入ることになった。
「私から歌うよー!」
ここから地獄の時間が2時間始まった。彼女から誘った割に彼女は音痴だった。
「楽しかったね」
「そ、そうだね」
「じゃぁ、今日は遅いし帰ろっかー、じゃあねーたけるくん」
彼女はいつも楽しそうだ、そして自由だ。
翌朝、少し早めに登校すると彼女が楽しそうに走って来た。
「たけるくんおはよー!」
その瞬間みんな、僕に注目した。
彼女は明るくかわいい、要するにモテるという言葉は彼女のような人にあるものだ。
「お、おはよ」
元から僕は注目されるのは苦手だから内心迷惑だ。
「今日も、どっかいかない?」
「暇だしいいけど」
「じゃぁ、また放課後ねー!」
また、遊ぶことになった。決まるのが早い。
「おい、お前あの子と付き合ってるの?」
サッカー部キャプテンのクラスの人気者の森本圭人だ。
「あー、初めましてか!けいとだよ、よろしくね。で、どうなの?」
「そんなんじゃないよ。ちょっと話すだけ。」
「だけど、さっき放課後ねって」
「なんか、この2日間誘われてて、よくわかんないよ。」
本当の事だ。けいとは少しからかいながら
「あの子、たけるくんに興味あるんじゃない?」
「そんなことないよ、あとたけるでいいよ。」
この時の僕は、そう思っていた、ただの彼女の暇つぶし程度だと。
けいとと話しながら帰る用意をしていると後ろから
「たけるくんー!」と放課後の教室に響いた。
「はい!」
つい、返事も大きくなる。
「今日は、図書館に勉強しに行きます!」
「勉強…」
勉強は1人でする方が捗るし気分じゃなかった。
「どうしたの?たけるくん?」
「いや、大丈夫だよ。じゃぁ、行こっか」
4時頃の校庭は部活動の声が飛び交っている上に太陽が眩しく、綺麗だった。
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