「面白さ」でキャラを作ってみよう

 今まで説明したことは、どちらかというとストーリー主導で物語を作る方法でした。しかし「面白さ」はキャラ設定にも使うことができます。この記事ではそのやり方を考えてみましょう。


 キャラの履歴書を作れ、というのがキャラを作るときによく言われる助言です。筆者なら、キャラに「面白さ」を適用してみては、と言うでしょう。例えば主人公、とりあえず少年として、彼は憧れの人に「会いにゆく」目的を持っています。その旅の中、ある少年と出会います。彼は家族の干渉から「解放され」たいと願い、独立して真の「友達となってくれる」相手を探していました。また主人公は別の少年とも出会います。彼は彼の一族を滅亡させた「敵を倒し」、一族の名誉を「取り戻す」という目的を持っています。三人はそれぞれの目的を達成するため、協力して冒険の旅に出かけます……。


 どの作品か分かりますよね? 「HUNTER×HUNTER」です。「」内はキャラ設定に埋め込まれている「面白さ」です。最初に「面白さ」をキャラに適用すると、性格とかの属性がほぼ自動的に決まるという利点があります。例えば主人公には「会いに行く」が設定されているので、愛情や友情などの絆を大切にするキャラであるべきでしょう。サブキャラ1は孤独に苛まれているとか、サブキャラ2は手段を選ばない冷酷さを持っているとか。そこからさらに容姿とか生活環境とかも導き出せるのではないでしょうか。


 各キャラが「面白さ」を達成するのを妨害する要素をキャラ設定に付け加えれば、それらを克服することによって成長を描けます。会いに行く相手が、主人公が強くならなければ、会ってやらないと考えているとか、サブキャラ1は心理的のみならず、実は物理的に拘束されているとか、サブキャラ2の敵は特殊な能力を得ない限り倒せないとか。


 その上で最近勧められている、「極端化」を施してみてもいいかもしれません。「HUNTER×HUNTER」でも採用されていますよね。友情を妨害する者は殺す、という主人公の極端な価値観。他にもそれほど極端ではないですが、とがった思想を持ったキャラが多数出てきます。何もないところから極端さを作るのは大変ですが、「面白さ」のベースがあればやりやすいのではないでしょうか。


 ただし、キャラ設定に「面白さ」を使う問題点もあります。あるキャラに設定されている「面白さ」が達成されてしまうと、そのキャラの存在意義がなくなってしまう、という問題です。評論家の岡田斗司夫氏は、ハンターが一度全力を出して戦うと、そのハンターは以後物語からフェイドアウトする法則がある、という趣旨の発言をしていました。その現象の裏にはこの問題があると思います。


 回避策としてまず考えられるのが、「面白さ」をたくさん設定してキャラを延命する、というものでしょう。しかしキャラが「ブレる」危険性があることは容易に想像できます。真の解決方法は、物語の中で新しい「面白さ」をキャラに獲得させるということです。このやり方はまだ確立されていません。「ポストハンター」作品が解決すべき課題ですね。


 ストーリーテンプレキャラにももちろん「面白さ」は適用できます。例えば主人公の成長を計る、「ゲートキーパー」というキャラテンプレがあります。要は主人公が一定の水準に達していない場合、先に進ませてくれないキャラのことです。例えば彼に「取り戻す」を設定してみましょう。彼は敵ボスに囚われの身になっている妹を奪い返すため、強い者を探している。主人公が彼を倒すほどに強ければ妹を取り戻すというサブストーリーの後で主人公に感謝し、先に進ませてくれる、とか。なんかサブストーリーの素案までできちゃいましたね。このように物語を膨らませるためにも便利に使えます。


 無からキャラを作るのはなかなか大変です。キャラ作りに行き詰まったらこの方法を試してみてはいかがでしょうか。キャラ作りにこれとは違う持論をお持ちの方も、「道具」はたくさん持っていて損はありません。

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