魔法と婚活

花本真一

第1話 婚活パーティー

 彼女は焦っていた。あと一年で三十路になり、二十代を名乗れる最後のこの年を無下にするわけにはいかなかったのだ。

 彼女は望んでいた。天涯孤独の身の上で、死んだときに誰も看取ってくれない人生に絶望した彼女は、共に歩んでくれる人の存在を求めた。そして、願わくば、子どもや出来れば孫も欲しいと思った。

 そんな思いを胸に抱き、婚活を始めて、早三年。一向に縁に恵まれず、ここまで来てしまったのだ。

 高望みをしているわけではないのに、なぜか上手くいかない。

 迷った彼女は黒魔術に頼ることにした。悪魔を呼び出して、彼女はある能力を手にすることに成功した。

「マスターベーション魔法? 」

「左様。男はお前達、女と違って興味のある異性を見ると反応する器官を持ち合わせているのだろう。この魔法を使うと、自分に興味がある場合に限り、それが反応する。興味が高ければ高いほど、それはいきり立つようになっている」

「なるほど」

「但し、私も悪魔である以上、使命を果たさなければならない。一年以内に番となる相手を見つけ、結婚することが出来なければ、お前の魂を頂く。それでも欲しいか」

「……欲しいです」

 我ながらくだらない魔法だと思う。だけど、この際、マスターベーションだろうが、勃起だろうが何だって構わない。このままズルズル婚活を続けてもうまくいく保証はないのなら、悪魔とだって契約してやる。

「ふふふ。よかろう、契約成立だ」

 こうして文字通り、悪魔の誘惑に乗った彼女はその足で、婚活パーティーに臨むことになったのだった。

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