演技
学生に演じさせるような、簡単な台本を3人に渡す。まず絶望を覚えたのは一流。
なんとも面白みのない演技。一流なんてとんでもない、ど三流だ。
さらにひどかったのは二葉ちゃん。台詞を言うことに追われてしまい、とても演技と呼べるものではなかった。きのうデビューした子に求めすぎる自分も悪いのだが、ずぶの素人に求めすぎなのはわかるが小学生の劇のがよっぽどましだ。
唯一の希望のセイカちゃん。
アイドルを目指していたと言っていた通り少し心得があるのだろう。体幹もしっかりしていて堂々とした演技。
この子を軸にして当て書きしなすしかないかと思っていたのだが、
春がまた口を挟む。
「設定だけそのまま残して、演技しないでいいから自分が感じたままに喋ってみて。演技じゃなくていいから、自分だったらどうするか、ストーリーとかオチとか考えないでいいから。誰もみてないよ。おれらだけで楽しもう」
その言葉で3人はもちろんおれも救われた。
自然とすらすら出てくる二葉ちゃんのそれは、原石だった。演技が上手い。正直おれらはそれを褒め言葉と思わない。演技が上手い時点でそれは演技の枠を脱していないから。
自然体でその場を楽しむ二葉ちゃんにおれは魅了された。
それに、引っ張られるようにぐんぐん良くなったのはセイカちゃん。彼女はやっぱり二葉ちゃんと対極で演技が上手い。大金積んでようやくキャスティングできるような女優のような雰囲気。
先程、演技が上手いは褒め言葉じゃないと言ったが、彼女の演技はとにかく上手かった。自身の見せ方を知っているが故に自信に満ち溢れている。
そして、ここで1番意外性を見せたのは一流だった。アドリブで展開していく2人のストーリーに統合性を持たせつつギャグを織り交ぜてくる。
ストーリーが破綻しないギリギリの土俵際での立ち振る舞いが異常にうまかった。
春、お前はどこまで人をみているんだ?
そんな気持ちを察するかの様に、勝手に口を開く
「0か100になりそうだな。100にするのがおれらの仕事。名誉になるか不名誉になるかわからないけどおれらの名刺代わりになりそうだな。しんどいけど頑張ろうや」
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