演技力なんかほとんどないルーキーばかりのオーディション。姿を見た時のインスピレーションが大事だ。

演技力なんか求めてない。

話題性だ。今朝からこいつはニュースを賑わしている。

そして、おれが大好きな流星風流の新メンバー。

成功すれば流星風流の仕事に携われるようになるかもしれない。


「お前はたぶんそう思ってあの子を主演に据えたのだろうけど、正解でも有り間違いでもある」


その場で春はおれを説得し始める。

「これはおれたちの人生を大きく変える。運命が大きく変わる。そのエゴはあまりにも危険だ」


確かにエゴだ。だが、人生を変えるってのはわかるから耳を傾ける。


「恐らくランキングに関わらずに業界内で評価されるのは新人達の活かし方、プロデュース力だ。あの新人1人に背負わしたらあの子は潰れる。けど、話題性があるのもわかる。だから、ショートカットの子と対極的にいた、theアイドルっぽい子も入れて仕上げよう。」


「そっちのが冒険的過ぎないか?」

自分らしくない意見だったのに気づいたのは発言した後だった。

「だからこそ、成功した時の恩恵は大きい。お前はたぶん今までおれらであたためていた作品を演じさせるつもりでいるだろうけど、時間とってあの子達に合わせた作品つくるぞ。価値がある。この作品の良し悪してわおれたちの人生変わるぞ」


全てを見透かされていた。

キャストの力量関係なく、ストーリー、創造性だけで欺こうとしていたが、目の前の相方すら欺けていなかったのだから新たなストーリーを作るしかない。

ただ、そのやりたかったストーリーは相方発案の輪廻転生をテーマとした作品。初めて本に目を通した時にこいつとならやっていけると確信したものだった。いつか重大な舞台で発表しようと約束したもの。


それを捨てると言い放った春の発言におれは従うしかなかった。それほどまでに、おれにはない先を見据えたプロデュース力は春にはあるからだ。


ショートカットの子、対極に位置する子。

その2人をオーデションで軸にする事を発表した。


その2人に当て書き、つまり本人達のキャラを尊重するストーリーをこれから考える。


そして脇を固めるキャストは次の臨時オーデションで決めることにした。



いそがしくなるなぁ。と頭を書いているおれに対し春は言う


「なんだか機嫌良さそうじゃん」

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