僕と優

人は何の為に産まれ死んでいくのか


案の定僕の午後は運命論やらを考えて行くうちに誰にも答えなんてだせない哲学的な問いへと辿り着いた。


人の為と書いて偽りだよ


と言ったのも親友の言葉だった。

結局は皆自分を優先して動いていると捉えてもいい言葉。

今回、ペンライトでのサプライズは流星風流の秋田憂ちゃんを喜ばせると共に会場にいた。

憂ちゃん推しの自己満足の比率は確かに高い。他のメンバーと、そのファンの気持ちはそっちのけである。

現に握手会で嬉し涙と感謝の言葉をいただけた僕の満足感も何とも形容しがたい達成感、満足感で満ちている。


偽 への僕の考え方が正しければ、我が親友は今回の件、何が自分の利益に繋がったのだろうか?


考えてもわからないので腹いせに現代文の授業で先生にわざと戸惑うような質問をしてやった。


「この時Aは、どういった気持ちで下線部Aの心情を書きなさい。と、ありますが、どこかで作者が明確にしているのですか?あくまで前後の文と作者の傾向からの予想でしかすぎないと思うのですが、明確な答えはあるのでしょうか?この作品がフィクションである以上余計に作者にしかわからないと思いますが、どうなんでしょうか?」


挑発的ではなく、真剣に疑問わ抱いてしまったような演技もあってか、案の定現代文の先生は戸惑い始めた。

こんな質問教師を長年やっていれば何度かされていそうなものなのに。


それともタブーってやつで、今まで誰も思ってはいても口にしてはいけ言葉だったのだろうか。


今度、優に聞いてみよう。少なくとも、今威圧的にも情け無く別の話題に変換したこの中年よりは魅力的な自論を説いてくれるはずだ。


今日だってあいつの言葉で僕の思考はいっぱいになっている。

いや、今日だけの話しじゃないな。


帰り支度を済ませるタイミングを見計らったかのように優が教室のドアから顔を見せる。


そして一緒に下校するのがいつもの流れ。


「いちるは何の為に産まれてきたとか考えた事ある?」


また心を見透かしたような発言をしてくるので、小さな反攻をした。


「ん?優、お前は?」


おうむ返し。答えたくない会話や話の流れを自然に変える魔法のような手段。


「俺は見つけちゃったってか、理解しちゃった!自分がそう思って自分が納得できたら人になんと言われようが、それが正解!!それでいいの!!」


「なんだその熱血教師みたいな、偽善者みたいな答え」


真っ当すぎる考えすぎて鼻で笑って捻くれ者代表みたいな言葉を思わず口にする。


「偽善って大事だよ。偽りか本物かは感じた人にしかわからないけど。善である事には変わりないから、そんなの偽善だ!って言った人間が悪者になる。正義と戦うのはまた違った正義だ!なんて言うけど、決着ついて少し経てば違った正義は悪として語られるのが大多数だよ。大多数に従えばいいの。よくさ、現代文でこの時の感情を答えよ?的な?あぁゆうのもだいたい大多数の解釈でしかないし、作者が違う気持ちで書いててもその大多数の意見に負けたりするからな。

理解できたかい?悪者の河村一流くん!」


なんだろうか。決して答えがないような哲学的な質問の自論をまるで正解です!と不条理に掲げられてるにもかかわらず妙に納得せずにはいられないような変な気持ちと、説得力は。


そしてあのやたら主人公が暴走するロボットアニメの敵側なのか主人公の味方なのかよくわからないような立ち位置の白髪イケメンみたいなまるで全てを知っている様な口調は。


「カヲル君ぶるなよ」

「あんな心情アニメに出てくるような説得力はないよ!シンジ君」


こいつにとってはあのアニメはロボットアニメではなく人を描いたアニメだったのか。

世の中の見方が違うんだろうな、根本的に。



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